憂鬱に息が詰まり、いつもの癖で深く俯いた。

「お……い……」

 やはり、僕は普通にはなれない。親しい人も作れない。作りたくない。
 これからもずっと、僕は、自分の異常さにうんざりしながら生きていくしかない。

「……い。おーい、久世くん?」

 急に名を呼ばれてはっとする。
 物思いに(ふけ)っていたせいで反応が遅れた。まずい、教室を抜け出した僕を追ってきた先生かも、と緊張が走る。

 けれどそうではなかった。
 相手は、もっと意外な人物だった。

「ごめんね。考えごとしてた?」

 振り返った先で眉尻を下げているのは、クラスメイトの清永(きよなが)だった。
 清永(らい)。成績は入学以来学年トップクラス、加えて運動神経も抜群、さらには長身に整った顔立ちとルックスにまで恵まれた校内の有名人だ。
 誰に対しても分け隔てなく親切で、学年や性別を問わず皆から羨望の眼差しを向けられている。生徒に限らず先生たちにも気に入られている、まさに雲の上の人物だ。

 そんな人が、なんで今ここに。