友達になった人気者が、人間じゃなかった話

 あれほど恐れていた孤立が、今は不思議と怖くなかった。
 さっきの話題になにも言い返せないまま無理に笑い続けるくらいなら、ひとりでいるほうが遥かにましだとすら思う。

 それ以上喋る気も起きず、僕はそれきり後ろの扉から教室を出た。

 特にあてもなく廊下を歩きながら、ふと自分の手のひらを見つめる。
 怒りで震える感覚を初めて知った。指の先まで、本当にこんなふうに震えるものなのか――視界も、()ぜた光を直視した後みたいにチカチカと眩しい。

 五時限目の予鈴まであと数分だ。特に行きたい場所があるわけではない。
 どのみち教室には鞄を取りに戻らなければならないけれど、今日はサボって帰っちゃおうかな、と不意に投げやりな気分になる。

 ……サボる?
 僕が? 授業を?

 不思議だ。体調不良での早退は何度か経験があるものの、自分の意思でサボったことなんか一度もない。それなのに、今ならなんだってできてしまいそうだ。

 そういえば清永はどこにいるんだろう。今、あいつと話したいかも。
 そんなことを考えながら、なんとなく北校舎三階の渡り廊下に差しかかった、そのときだった。