友達になった人気者が、人間じゃなかった話

 まっすぐ見つめると、武田は見開いた目をそろりと泳がせた。
 今まで俯いてばかりだった僕みたいな奴に真っ向からこんなことを言われたら、確かに驚きもするのかな、と他人事のように思う。

 今後、僕はこの人たちに声をかけてもらえなくなるだろう。
 だとしても、もうそれで良かった。

「あいつのこと大して知らないくせに、悪口ばっかり言うな」

 もっと怒りの滲んだ声が出るかと思ったのに、想像していたよりもずっと淡々とした喋り方になった。
 伝え終えた後、ひび割れた空気の隙間から、中野がへらへらと笑みを浮かべ直して口火を切ってくる。

「なに? てかなにマジになってんのお前、急に……」

 空気を取り持つために、僕が勝手に怒り出したことにする気らしい。
 中野が取り繕うような言葉を口にした隣で、武田は不機嫌を極めた顔で僕を睨みつけている。

 その頃には、周囲の視線が僕らに向き始めていた。

「え、どしたの?」
「なに、武田くんたち喧嘩?」

 さざめきが、僕らのいる席から放射状に教室全体へ広がっていく。
 渋谷さんが普段仲良くしている女子たちも喧騒に気づき、怪訝そうに耳をそばだてている。そうした空気を察知したのか、武田も中野も目に見えて怯み始め、僕はそんなふたりをひどく冷めた目で見つめてしまう。