「そういや久世ってさあ」

 昼休み、武田たちと一緒に弁当を食べ、食べ終わって片づけるタイミングで急に話を振られてぎくりとした。
 それまではゲームの話題だったのに、いきなりふたりの視線が向いてきたから、僕はついたじろいでしまう。

「昨日、あれから大丈夫だったか?」
「え……昨日?」
「そうそう、オレも訊きたかったんだそれ。清永に連れてかれたじゃん、脅されてる奴みたいな顔してたぞお前」

 武田から、次いで中野から、順に訊かれる。
 適当に相槌を挟んでばかりだったそれまでの話題はあっさり収束して、そうだよな、それを訊かれないわけはないよな、と思う。

「言っただろ。ああいう奴ってオレらのこと、陰で馬鹿にしてんだって」
「そうそう、下に見てるんだよ。目ェつけられないように気をつけたほうがいいって」
「ああいう奴と一緒にいると、自分が特別になったみたいな勘違い、しちゃいそうだよな~確かに。感覚バグるっつうかさ」

 ふたりには特に刺している意識はないのかもしれないけれど、言葉がチクチクと耳に痛い。
 表面上は声を荒らげることもなく穏やかな喋り方をしている。ただ、武田も中野も、本当に言いたいのは〝あんまり調子に乗るなよ〟なのだと思う。僕が清永と仲良くなったら、今まで通りに僕を見下しにくくなってしまうだろうから。