その気の抜けた仕種を、例の女子たちが指を差しながら盗み見ている。
 彼女たちの眼中にはすでに僕なんか存在していないらしく、傍目にはかなりはしゃいでいるように見えた。

 態度が露骨すぎて、もやもやした気分になった。
 清永ってああいうのあんまり気にしないのかな、と心配になる。同時に、昨日の放課後、武田と中野が口にしていた言葉が脳裏に蘇った。

『他の奴のこと、なんつうか下に見てる感じするんだよな』
『オレらも馬鹿にされてそうだよな、陰で』

 ……ないだろ、そんなわけ。
 心底そう思う。他人を下に見ている感じも、内心馬鹿にしていそうな感じも、清永からは少しもしない。それに、元々想像していたよりもずっと普通だ。

 ただ、誰の目も気にしていない。
 他人からどんな視線を向けられても、清永は変わらない。

 昨日の武田と中野のやり取りだって、教室にいた清永の耳に入っていても全然おかしくなかった。
 でも清永には届いていない。明らかに(とげ)を孕んでいたふたりの言葉を、清永はちっとも受け取っていない。人から普通だと思われていたい僕とは違う。