*


 翌朝、昨日別れた橋の手前の交差点で、清永とばったり鉢合わせた。

「あ、久世くん。おはよ~」
「……おはよ」

 考えすぎて寝不足気味の僕とは対照的に、清永の笑顔は朝から朗らかで眩しい。
 清永は当然のように僕の隣に並び、近くを歩いていた同じ学校の女子ふたりからわざとらしく視線を向けられた。
 彼女たちは清永ではなく僕を見ていて、『あれ清永くんだよね、なんで清永くんがお前と? ていうかお前誰?』と顔にデカデカと書いてあって、だいぶ気まずい。

 俯かないで歩くだけで、人の表情はこんなにも鮮明に見えてしまうものなのか、と改めて実感する。
 プレッシャーに負けてつい俯きそうになったものの、当の清永はまったく意に介していない様子で楽しげに話しかけてくる。

「久世くんちって学校まで近いの?」
「近いってほどでは……歩いて十五分くらいかな」
「いやめっちゃ近いじゃん、羨ましいわ~」

 清永の通学時間は、電車でだいたい二十分。
 加えて、家から駅までも、また駅から学校までも結構歩くという。

 大変そうだ。雲の上の有名人でも早起きって普通につらいのかも、と隣であくびをする清永を横目に思う。