「久世くん、かなりいい」
「は? なにが」
「なにっていうか、やっぱ友達になりたいな~って思う」
歯を覗かせて笑う清永から、僕は露骨に目を逸らす。
照れもせずによくそんな恥ずかしいことが言えるな、という言葉が喉まで出かかったけれど、なんとか呑み込んだ。
「武田くんたち、さすがにもういないだろうけど、教室の前通るの気まずいしこっちから昇降口行こ」
「あ……うん」
流されるように返事をしながら、放課後の一連を振り返る。
武田と中野の誘いをきちんと断れず流されていた僕に、清永は助け舟を出してくれた。その結果が今だ。それなのに、うまくお礼を伝えられる気がしない。自分って本当に駄目な奴だな、と苦々しく思う。
昇降口に向かい、校門を出て、途中まで一緒に帰った。
学校前の交差点を過ぎ、細い川に架かる橋の先で別れた。前に電車通学だと言っていた通り、清永が向かうのは駅の方面らしかった。
「じゃあここで。また明日」
「ああ。気をつけて」
「久世くんもね」
笑う清永の顔と振られた手を、じっと見つめる。
周囲はさっきよりも薄暗くなっているのに、清永の顔は不思議と、渡り廊下にいたときよりもはっきり見えた。
歪んだ化け物の輪郭は、今日の清永には最後まで見えなかった。
「は? なにが」
「なにっていうか、やっぱ友達になりたいな~って思う」
歯を覗かせて笑う清永から、僕は露骨に目を逸らす。
照れもせずによくそんな恥ずかしいことが言えるな、という言葉が喉まで出かかったけれど、なんとか呑み込んだ。
「武田くんたち、さすがにもういないだろうけど、教室の前通るの気まずいしこっちから昇降口行こ」
「あ……うん」
流されるように返事をしながら、放課後の一連を振り返る。
武田と中野の誘いをきちんと断れず流されていた僕に、清永は助け舟を出してくれた。その結果が今だ。それなのに、うまくお礼を伝えられる気がしない。自分って本当に駄目な奴だな、と苦々しく思う。
昇降口に向かい、校門を出て、途中まで一緒に帰った。
学校前の交差点を過ぎ、細い川に架かる橋の先で別れた。前に電車通学だと言っていた通り、清永が向かうのは駅の方面らしかった。
「じゃあここで。また明日」
「ああ。気をつけて」
「久世くんもね」
笑う清永の顔と振られた手を、じっと見つめる。
周囲はさっきよりも薄暗くなっているのに、清永の顔は不思議と、渡り廊下にいたときよりもはっきり見えた。
歪んだ化け物の輪郭は、今日の清永には最後まで見えなかった。



