「どういう得?」
「あは。内緒」

 あからさまにはぐらかされ、この野郎、と心の中で毒づいた。
 掴みどころのない奴だ。一見、訊かなくても自分から身の上話をベラベラ喋り出しそうなのに、清永は自分の話を(ろく)にしない。

 不思議だ。
 話せば話すほど、清永は謎にまみれていく。
 同時に、分かりたくもなる。

「今まで大変だったでしょう。いつから視えてたの、これ」

 同情の滲んだ声で訊かれ、ぎょっとする。
 清永の口ぶりは、まるで今この瞬間もなにかが視えていると言いたげだった。今、僕らの周りには他に誰もいないのに。

「覚えてない。気づいたときには視えてた、と思う」
「……そう」

 深追いはされたくないな、と思いながら告げた言葉に、清永もずるずると追及を続けるような真似はしなかった。ほっとする。

 力について人に打ち明けるのは初めてだった。
 家族にすら伝えていない。つまらない嘘だと疑われたり突き放されたりしたら、あるいは不謹慎な冗談を言う奴だと失望されたら――そう想像するだけで、僕の口は簡単に閉じる。