「そういうの良くないと思う。もうやめたら?」
「やめてどうしろっていうんだよ。おとなしくクラスで孤立してろってか?」
「いや俺いるよね? 最近めっちゃ喋ってんじゃん俺ら、孤立とかしないでしょ全然」

 舌打ちする直前で固まった。
 言葉の意味を遅れて理解し、僕は化け物を見るような目で清永を見つめ返す。

「……あんたと一緒にいろってこと? 教室で?」
「えっなにその言い方、嫌なの?」
「いや、別に嫌、というわけでは」
「そんな言い淀むことある? 傷つくんだけど」

 言いながらしゅんと下がった清永の眉尻を見ていたら、だんだんおかしくなってくる。直前まで苛々して仕方なかったはずなのに。

「……ふ」

 堪えきれずに噴き出してしまった。
 一方の清永は、僕をきょとんと眺めて、それからようやく歯を見せて笑う。

「あは。久世くん、ちゃんと笑えたんだ?」
「そりゃ笑うだろ、おかしかったら」
「武田くんたちといるときはそんなふうに笑わないだろ。百パー作り笑顔で~す、みたいな顔してるじゃん、さっきもそうだったし」

 唇を尖らせた清永は、一転して不服そうだ。
 僕が武田たちの機嫌を窺いながら一緒にいるのが、よほど気に食わないらしい。