「だって、仲良くなった奴の首が見えなくなったらどうすればいい。いつかは家族もそう見えるって想像するだけで鬱になりそうだ」
「……久世くん」
「大事な人なんて、僕は誰も要らない」

　初めて他人に漏らした本音は、思っていたよりもずっと簡単に喉を滑って、最後には吐き捨てるような調子になった。
　自分の意思で喋っているはずなのに、無駄に喋りすぎている気もして、ふと怖くなる。苦々しく唇を噛み締めていると、真向かいの清永が、真面目な顔のままで首を傾げた。

「なのに武田くんたちと仲良しのふりしてるの？」
「そうだ」
「ええ～。一緒にいる意味あんの、それ？」

　意地の悪い口調ではなかった。
　なかったけれど、だからこそ、その言葉の刃は僕の胸にまっすぐ突き刺さる。

「……仕方ないだろ」

　嫌になるほど清永の言う通りだ。
　図星すぎて言い逃れできそうにない。それでも。

「僕は普通じゃない。誰とも深く付き合いたくない、普通だと思われたいから孤立するのも嫌だ、だから武田と中野は僕にとって貴重な……いや、いい。別にあんたに分かってもらえなくても構わない」