「三人の中で久世くんだけ空気が違うんだよな。久世くん、あのふたりとちゃんと仲良くしたいわけじゃなさそうっていうか」

　真面目な顔の清永が、目を細めて僕を見ている。
　またこの目だ。清永のこの目を見ていると息が詰まる。笑っていても怖いが、そうでなくても怖い。この目に心の内側を見透かされている気分になるから、かもしれない。

　清永は有名人だ。誰とでも分け隔てなく接する、校内の羨望の的。
　特定の誰かと踏み込んだやり取りをしている印象はほとんどない。そんな人が、どうしてさっき、わざわざ武田と僕の間に割って入ったんだろう。どうして、僕をあの場から連れ出してまでこんな話をしてくるんだろう。

『なんで武田くんたちと一緒にいんの？』
『三人の中で久世くんだけ空気が違うんだよな』

　よく見ている。むしろ見すぎだ。踏み込みすぎだ。
　どうして清永はここまで僕に構うんだ。武田たちの前であんな態度を取ってまで、大して親しくもない僕に突っかかってくる理由――すぐには思い当たらない。

　でも。

「そうだ」

　ぽつりと答える。
　我ながら本当に、ぽつり、という感じの声だった。