「実際これ(・・)取り出した後、久世くんがわざわざ『返せ』って言ってくるとは思ってなかったんだよね。正直、武田くんたちと一緒にいる人だからっていう偏見もあったよ」

　忙しなく目を泳がせてしまう。
　淡々としてはいるが、清永の喋り方は責めるような調子ではない。それなのに、僕は勝手に責められている気分になる。

　落ち着かない。
　どう答えればいいのか、分からない。

「武田くんって、周りの人のこと下に見る癖あるじゃん。中野くんもだけど」
「まぁ……そう、かも」
「久世くん、あのふたりから思いっきり見下されてるよね。なんで一緒にいんのかなって、すっごい不思議。あとさ」

　言葉の最後、清永の声は一段と低くなる。

「さっき見てて思ったんだけど、久世くんは久世くんで武田くんたちのことちょっと見下してない？」

　痛いところを突かれ、咄嗟にはなにも返せない。
　武田がコンプレックスの塊であること、僕と中野を下に見て安心しているだろうこと、中野も僕を見下しながら必死に自分の居場所を守っていること、そんなふたりを僕が密かに哀れんでいること。
　僕ら三人のいびつな関係、そのすべてを見抜かれている気がして、ぞわりと背筋が粟立った。