「久世くんってさ、なんで武田くんたちと一緒にいんの？」

　ただでさえ息が詰まっていたのに、ぎくりと肩が跳ねる。

　そういうことを誰かに訊かれるのは初めてだった。
　僕が武田たちとつるんでいるのは、校内で変に孤立して目立ってしまわないため――僕自身が〝普通〟の皮を被り続けるためだ。元々の相性の良さとか、居心地の好さとか、楽しさとか、そうした期待に目を瞑った付き合いを、僕は自ら選んでいる。

「なんでって、別に理由なんか」

　ないよ、とはっきり言い切れずじまいで、僕の言葉は半端に途絶えた。
　苦い気分になる。数日前まで僕なんか眼中にもなかっただろう相手に、まさかこんな踏み込んだことを訊かれるとは――いや、違う。清永は僕が眼中になかったわけではない。

　なぜなら、渋谷さんが事故に遭った日、こいつは。

『前から気になってたんだ。久世くん、ちょっと妙な感じするなぁって』

　あの思わせぶりな口調は、前々から僕を観察していたとでも言いたげだった。
　僕が人とは違う異常を抱えていると、清永は、きっとあの日よりも前から勘づいていた。