武田も中野も、自分より下だと判断した僕を傍に置くことで安心している。
 自分たちが安心するための材料でしかないから、なにを考えているのかとか、どうしたがっているのかとか、そういう僕の内面にははなから興味がないのだと思う。
 だから僕も、密かにそれを利用させてもらって、クラスで孤立する危険――普通ではないと他人に思われてしまう危険を回避している。

 でも、それを続けなきゃいけない理由って、なんだった?

 きゅ、と唇を噛み締める。
 いけない。今考えるべきことではない。
 今は、早く武田たちに話を合わせたほうがいい。

 さっさと相槌なりなんなり挟まなければと急いで口を開いた、そのときだった。
 武田と中野の後ろに、ゆっくりと歩み寄ってくる人影を目に留め、僕は開いた口をそのままの形で固まらせた。

「なぁに、武田くん?」

 清永だった。
 武田の背後に立つまでの動きは見えていたから、どちらかというと、その挑発的な声音にぎくりとする。

 武田自身は、唐突に肩に手を置かれて驚いたらしい。
 へらへら浮かべていた笑顔を強張らせ、微動だにしなくなる。武田の隣で、中野もすっかり固まっていた。