「あの、ごめん。今日はちょっと……」

 どういう言い訳を続けようか迷い、また妙な間が空いた。
 それきり口ごもってしまった僕へ、武田が苦笑交じりに返してくる。

「ええ~、久世って最近どしたの? 前より付き合い悪くね?」
「そ、そんなことないよ。でも」

 言い訳がうまく口を滑ってくれない。
 武田は少し不服そうだ。その顔色を緊張気味に窺っていると、中野がさらに質問を重ねてくる。

「ていうか、久世って清永となに喋ってんの?」
「……え?」
「ああ、最近たまに一緒にいるよな。渋谷の事故があった日も、清永、久世のことわざわざ追いかけてかなかった?」

 話が妙な方向に向かい始め、内心が苦々しさで満ちる。
 中野の疑問に重ねて問いかけてきた武田は、眉を少しだけ八の字にして、気遣わしげな目で僕を見ている。けれど、僕は知っている。決して短くはない期間をともに過ごしてきた以上、嫌でも分かってしまう。

 この顔をしているときの武田は、別に、僕を気遣っているわけではない。