「……清永」
「ん?」
「放してくれ。ちゃんと前、向くから」

 照れくささをごまかしつつ、顔を正面に戻して呟く。
 微かな笑い声とともに、清永は、今度はあっさりと僕の首から手を放した。

「えー、これで全校集会を終わります。三年六組の生徒から順に教室へ……」

 マイクを使って喋る司会の先生の声が、一気に声量を増した周囲のクラスメイトたちの話し声に呑み込まれていく。

 もしかして、清永っていい奴なのでは。
 ざわめきの中、ぼうっとしながら、密かにそんなことを考えた。