今日は朝に全校集会がある。
 全学年、十八クラス分の生徒が詰め込まれた体育館はかなり窮屈だ。空調が効いていても人の熱気で蒸し暑く感じる中、僕は、列の後方でできる限り身を縮めて俯いていた。

 人の集まる場所は苦手だ。
 僕は人混みが怖い。こういう場所では、立っていても座っていても、とにかくじっと俯いているしかない。

 決まった並び順もなく、クラスごと適当にまとまっているだけの列は、ところどころ派手に乱れている。
 人という人の、特に肩より上には目を向けないようにと強く意識する。

 そうしていると、不意に、金曜に聞いた清永の言葉が脳裏を掠めた。

『ああ、〝貸して〟って言ったこと?』
『そのままの意味だよ。久世くんから借りたんだ』

 あれが嘘ではないなら、清永は僕から力を借りただけ。つまりいずれは返される。
 あの日は結局返されなかったが、覚悟はしておいたほうがいい。この俯き癖も、返されたときを見越して、下手に直さないほうがいいに決まっている。

 さらに深く頭を下げたそのとき、する、となにかが首筋に触れた。
 ひ、と零れかけた声を、なんとか喉の奥に押し込めた。首に触れているのが後ろに立っている奴の指だと気づき、嫌な予感が急速に湧き起こってくる。