『家族が退院したばっかりで大変なんだ、今日はもう帰る』

 一方的にそう告げ、あの後、僕はさっさと逃げた。

 あの力は、僕にとって拳銃みたいなものだ。
 持っていたくないのに持たされたまま生きてきて、隠して、ごまかして、これからもそうしていくしかなかった。

 それを勝手に取り上げたのが清永だ。
 意図せずとはいえ、あんな物騒なモノを手放した僕にも責任があるのではと、どうしてもそんなふうに考えてしまう。

 それに、あのとき見えた化け物はなんだったんだろう。

 伸びて、曲がって、ひしゃげて……あれは確かに清永の身体だった。制服の中で歪んでいた。本当に一瞬だったから、僕の見間違いだった可能性もあるけれど、いくらなんでも不気味すぎる。

 清永とはもう関わらないほうがいいのかもしれない。
 でも、それで本当にいいのかとも思う。

 答えが出ないまま、無為に週末は過ぎていき、憂鬱な気分で月曜を迎えた。