僕の目がおかしくなったのかと一瞬自分を疑ったものの、身体の異変は感じない。
 ぞろぞろと悪寒が背筋を抜けていく中、僕はおそるおそる目を開く。本当は見たくなかったけれど、確認しないままでいるわけにはいかないからそうした。

 でも。

「あ……れ?」

 目の前に佇んでいたのは、満面の笑みを浮かべる清永のみ。
 ひしゃげた輪郭の化け物なんて、周囲のどこにも見当たらなかった。

「なぁ久世くん、今日の放課後どっか寄って帰らない? てか家どの辺? もっといろいろ話したい!」

 はしゃいだ声で矢継ぎ早に質問してくる清永を、このとき、僕はきっと本当に化け物を見るような目で見つめていたのだと思う。

「……は?」

 渇いた喉の奥から、再び、素っ頓狂な声が零れた。