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 翌日。
 教室の前は目立つからと移動した。場所は、昨日も清永と鉢合わせた北校舎三階、渡り廊下の端だ。

 僕についてくる清永は無駄ににこにこ楽しそうで、少し苛立った。
 空調の効いた教室から、文句のひとつもなくついてきてくれたのは意外だったが、いずれは僕になにか訊かれるだろうと想定していたからなのかな、とも思う。

「手短に訊く。昨日の……ええと、最後の話だけど」

 周囲に人がいないか、二度左右を確認してから用件を切り出した。

「最後?」
「あれがどういう意味か、説明してほしい」

 視えていた予兆が視えなくなったのは清永のせいなのか、僕のあの力は本当にあんたに移った後なのか――とまでは訊けない。こいつが僕をからかって遊んでいるだけの可能性は、まだゼロではない。

 ほどなくして、清永はわざとらしく首を傾げてみせた。

「ああ、『貸して』って言ったこと?」
「……そうだ」
「そのままの意味だよ。久世くんから借りたんだ」

 相変わらずにこやかな清永にどう返せばいいのか、言葉に詰まる。