「前は友達なんか要らないと思ってた」
「うん」
「誰とも仲良くなりたくなかった。けど、あんたは違うんだ」
「うん」
「もしあの力が自分に残ってたとしても、僕は清永とずっと友達でいられたらいいと思ったと思う」
「うん」
「あんたと友達にならなかったら、僕には本当になにもないままだったんだ、……だから」

 言いながら、ぐるぐると目が回り始める。僕だけが熱弁している気がする。
 清永は清永のままでいい。たとえ人間じゃなくても構いやしない。本当に伝えたい言葉は、結局、発する直前で喉の奥に詰まってしまう。

 相槌が適当すぎる。せめて目くらい合わせろ。なに時計ばっかり見てんだよ。
 そういう身勝手な苛立ちが、勇気を振り絞って喋っている僕の口を鈍らせる。でも次の瞬間、ぎくりと背筋が強張った。

 清永は僕の顔を見ている。
 それは確かなのに、目が合わない。なぜか。

 ――僕の目の位置が分からないからでは?