前を向いていい。向かないままではいられない。
 それを僕に教えてくれたのは清永なのに、どうしてその張本人が、こんなにも弱気なことを言い出してしまうんだろう。

「良かったよ。当たり前だろ」

 心外とばかりに返す。けれど、清永からの返事はなかった。

 拳を握り締める。今しかない気がする。
 伝えたいと思っていたことを、僕は、きちんと清永に伝えなければならない。

「あのさ、清永」
「うん」
「僕はあんたのこと、一番の友達だと思ってる」

 僕を見ない清永の視線が、ひときわ分かりやすく左右に振れた。

「あんたがなんか隠してるのは知ってるけど、構わない。言いたくなったらそのときに教えてほしい」
「……どしたの、急に」
「前から言おうと思ってたことだ」

 泳いでいた清永の目が、観念したかのように僕へ向き直る。
 それでも、視線はまだ合わない。