清永からの着信だった。
 履歴は二回分残っていて、震える息が零れる。

 家の最寄りのバス停でバスを降りた。僕を下ろしたバスが再び走り始めるよりも先に、僕はスマホを握り締める。
 清永の着信に折り返そうと、急ぎに急いで通話ボタンをタップする。家に着くまでなんて待っていられなかった。

 通話が繋がったのは、五コール目だった。

『もしもし』
「あ、清永。久しぶり、あの、塾行ってて出られなかった。ごめん」

 清永に用件を訊く前に、半ば一方的にまくし立てて、それから沈黙が落ちる。
 過去にないくらい怖い静けさだった。吐息ひとつ聞こえてこないスマホに、たまらずきつく耳を押しつける。

 家まであと少しなのに、歩きながらの通話はしていられそうにない。
 とうとう足が止まったそのとき、気色悪いほどの静けさが、清永の声でふつりと途絶えた。

『葉月。明日、俺と会える?』