学校前の交差点は、今朝あんな事故があったばかりなのに、車も自転車も人も普通に行き交っていた。
あの騒然とした空気は全部嘘だったのかと思えてくるほど、いつも通りの光景でしかなかった。
放課後、午後五時手前。
入院中の祖母の見舞いで訪れた県立病院の、半円状の自動ドアの前で、僕は思わず二の足を踏んでしまう。
祖母の病室は個室ではない。隣のベッドには、手の皺の深い、祖母よりもずっと年嵩に見えるお婆さんがいる。右手の中指に、粒の大きな宝石のついた指輪をはめているお婆さんだ。
その人に予兆を視たのが二日前。祖母が入院した当日だ。
僕を普通から逸脱させる例の予兆は、その存在を忘れかけた頃に視えては僕を追い詰める。
いつかは家族の首も見えなくなるのかな、と想像しては嫌気が差す。どうして僕だけこんな普通ではないモノを背負わされているんだ、なんとかならないのか本当に、と心底うんざりする。
あの騒然とした空気は全部嘘だったのかと思えてくるほど、いつも通りの光景でしかなかった。
放課後、午後五時手前。
入院中の祖母の見舞いで訪れた県立病院の、半円状の自動ドアの前で、僕は思わず二の足を踏んでしまう。
祖母の病室は個室ではない。隣のベッドには、手の皺の深い、祖母よりもずっと年嵩に見えるお婆さんがいる。右手の中指に、粒の大きな宝石のついた指輪をはめているお婆さんだ。
その人に予兆を視たのが二日前。祖母が入院した当日だ。
僕を普通から逸脱させる例の予兆は、その存在を忘れかけた頃に視えては僕を追い詰める。
いつかは家族の首も見えなくなるのかな、と想像しては嫌気が差す。どうして僕だけこんな普通ではないモノを背負わされているんだ、なんとかならないのか本当に、と心底うんざりする。



