「けどさ、あんなにガリガリだった清永くんが今楽しく暮らせてるなら、良かったな~って思うよ」
顔を俯けたきりで、大きく目を見開いた。
良かったな~、という間延びした口ぶりがことさら深く耳に残る。大苑くんの声は、なんだかどこまでも〝普通〟な感じがして、咄嗟に僕は隣の彼をまじまじと見つめてしまう。
「不思議な人だったなって今も思ってるよ、それは本当。でも、普通じゃなかったら生きてちゃ駄目、とは別にならなくない?」
「あ……」
「なにより、おれが勝手に勘違いしてるだけかもだけど、中一のときにおれの悩みが軽くなったのってたぶん清永くんのおかげだ。だから、元気にやっててほしいなって思ってた。たとえ普通の人じゃなかったとしても」
大苑くんの顔、眼鏡の奥の黒い瞳を、うまく直視できない。
大苑くんが今語った考え方を、僕は知っている。よく似た考え方を、前にも他の人から聞いたことがある。
「この話、ずっと誰かにしたかったんだ。相手が久世くんで良かった」
はは、と笑った大苑くんの顔を、ようやく真っ向から見つめる。
顔を合わせてたった数日の、ただ志望校が同じというだけで知り合った彼に対して、いい人だなこの人、と初めて心から思う。
顔を俯けたきりで、大きく目を見開いた。
良かったな~、という間延びした口ぶりがことさら深く耳に残る。大苑くんの声は、なんだかどこまでも〝普通〟な感じがして、咄嗟に僕は隣の彼をまじまじと見つめてしまう。
「不思議な人だったなって今も思ってるよ、それは本当。でも、普通じゃなかったら生きてちゃ駄目、とは別にならなくない?」
「あ……」
「なにより、おれが勝手に勘違いしてるだけかもだけど、中一のときにおれの悩みが軽くなったのってたぶん清永くんのおかげだ。だから、元気にやっててほしいなって思ってた。たとえ普通の人じゃなかったとしても」
大苑くんの顔、眼鏡の奥の黒い瞳を、うまく直視できない。
大苑くんが今語った考え方を、僕は知っている。よく似た考え方を、前にも他の人から聞いたことがある。
「この話、ずっと誰かにしたかったんだ。相手が久世くんで良かった」
はは、と笑った大苑くんの顔を、ようやく真っ向から見つめる。
顔を合わせてたった数日の、ただ志望校が同じというだけで知り合った彼に対して、いい人だなこの人、と初めて心から思う。



