もしかして清永は、大苑くんや保健室の先生、もっと多くの人たちから、彼らの内を巡るモノを〝借りていた〟のではないか。
 人が内側に抱えている悩み、ストレス、感情、僕の場合は普通ではない力。そういうモノを持ち主から吸い取り、その身に取り込んでいるのでは。

 借りて、自分のモノにして――なんのために?
 分からない。清永がなにをしたいのか。

 清永が、一体なんなのか。

「……大苑くんは」

 深く俯く。
 浅い息の合間を縫うような細い声が、僕自身の意思とは裏腹にぽつりと零れる。

「清永のこと、普通じゃないって思ってたのか?」

 思ってたんだよな、と断定しかけた言葉を、意図的にねじ曲げた。
 隣の大苑くんが微かに息を詰めた。そういう音がした。僕らの間には束の間の沈黙が舞い降りて、そして。

「うん。思ってた」

 低い声で告げられ、傷ついた気分になる。
 僕まで〝普通じゃない〟と否定された気分になったのは、僕が清永を大事な友達だと思っているからだ。あるいは、清永の異常を他人に認めてほしくなかったからなのかもしれない。

 けれど、続いた大苑くんの話は、僕が想像していたようなネガティブな方向には進まなかった。