語る大苑くんの声が遠のいたり近くなったり、うまく話に集中できないながらも、僕は必死に耳を傾ける。

「おれらの中学って規模デカかったのもあるけど、一年のあの夏から清永くんと喋る機会とかおれにはもうなくて、そのまま卒業してさ」
「……うん」
「良かった、今日久世くんから話聞けて。ずっと気になってたから」

 大苑くんは、おそらく電車をすでに一本逃している。
 大苑くん自身も、当時の不思議な現象を誰かと共有したがっているように見えた。僕の学校名を聞いて思い出したのだろう、ほとんど顔を合わせることのなかった、中学時代の奇妙なクラスメイトとの一連について。

 改札の前を、人がまばらに行き来する。そのたびに起きる風が、肌をじっとりと湿らせる。
 渇きを思い出した喉が、ひゅる、とおかしな音を立てて鳴る。ゆっくりと隣に視線を動かすと、少し晴れやかな顔をした大苑くんと目が合った。

 清永の異常は、中学一年生の時点であったこと。
 大苑くんが清永に会って腕の異変を目にした後、当時抱えていた大苑くんの悩みが急に軽くなったこと。
 清永が保健室登校をしている間、保健の先生の性格が、刺々しいそれから穏やかに変わっていったこと。
 ガリガリに痩せていた清永の身体もまた、目に見えて健康的になっていったこと。

 さっきから頭に居座っている仮説が、どくりと心臓を高鳴らせる。