「あ、久世くん。お疲れ様~」
塾の終わりに、出入り口で手を振りながら声をかけてきたのは、別の高校に通う大苑くんだった。
お疲れ様、と僕からも手を振り返し、ふたり並んで塾を出る。
時刻は午後五時三十分。駅直結の塾から、大苑くんはいつも電車で帰る。隣の市から通っているらしく、大変そうだな、と思う。
大苑くんとは志望校が同じで、ときおり話をするようになった。
少し話さないかと誘われ、彼の電車の時間まで、改札の前で時間潰しに付き合う。
「そういえばさ、久世くんの学校って」
遠慮がちに高校の名前を確認され、うん、と頷き返す。
隣市に住んでいる大苑くんは、うちの学校に馴染みなんて全然なさそうだ。校名を口にする彼のイントネーションはほのかにたどたどしかった。
頷いた僕を見てわずかに表情を崩した後、大苑くんは、やはりどこか遠慮がちに続ける。
「清永って人、そこに通ってると思うんだけど、久世くんは知ってたりする?」
今ここで聞くことになるとは思っていなかった名前が耳を掠めた瞬間、ぼうっと相槌を打つ準備をしていた頭がひと息に冴えた。
塾の終わりに、出入り口で手を振りながら声をかけてきたのは、別の高校に通う大苑くんだった。
お疲れ様、と僕からも手を振り返し、ふたり並んで塾を出る。
時刻は午後五時三十分。駅直結の塾から、大苑くんはいつも電車で帰る。隣の市から通っているらしく、大変そうだな、と思う。
大苑くんとは志望校が同じで、ときおり話をするようになった。
少し話さないかと誘われ、彼の電車の時間まで、改札の前で時間潰しに付き合う。
「そういえばさ、久世くんの学校って」
遠慮がちに高校の名前を確認され、うん、と頷き返す。
隣市に住んでいる大苑くんは、うちの学校に馴染みなんて全然なさそうだ。校名を口にする彼のイントネーションはほのかにたどたどしかった。
頷いた僕を見てわずかに表情を崩した後、大苑くんは、やはりどこか遠慮がちに続ける。
「清永って人、そこに通ってると思うんだけど、久世くんは知ってたりする?」
今ここで聞くことになるとは思っていなかった名前が耳を掠めた瞬間、ぼうっと相槌を打つ準備をしていた頭がひと息に冴えた。



