友達になった人気者が、人間じゃなかった話

 わけの分からない状況に取り残してしまう罪悪感を、渋谷さんに対してひしひしと覚えつつも、僕は引きずるようにして清永を連れて教室まで戻る。

 すでに人の()けた室内は、驚くほどしんと無機質で、その中にずかずかと足を踏み入れていいものか一瞬迷うくらいだった。

 他人の視線がない中で、僕は確認とばかりに清永の腕を擦る。
 歪みが残っていないか、今さらながら気に懸かった。触れた腕にも手首にも指にも、奇妙な歪みの感触はなく、ようやくほっと息をつく。

「朝も言っただろ。もう少し隠せよ」

 声には自然と苦々しさが宿る。
 渋谷さんはなにも知らない。人に悪意を向けて楽しむような人ではないと思うけれど、清永の異常を知ったときにどんな反応を示すか想像がつかない。僕は渋谷さんを、そこまで深くは知らない。

 だから彼女の前から逃げた。
 危険は、少しでも減らしておくべきだ。

「僕は清永に、普通のままでいてほしい」

 乞い願うような呟きが漏れる。