友達になった人気者が、人間じゃなかった話

 ドアの前で素っ頓狂な声をあげたのは、渋谷さんだった。
 松葉杖の扱いにすっかり慣れているのか、階段の段差をものともせず踊り場まで下りてきた彼女は、目を細めながらようやく僕らの顔を認識したらしい。

「ええっ、清永くんと……くぜっち!? なんでこんなトコいんの!?」

 そのあだ名は続投なのか、と面食らう。
 しかも清永は〝清永くん〟のままだ。なんで僕だけ、と困惑してしまう。

「い、いや。外の風でも浴びよっかって……なあ?」

 同意を求め、隣の清永に目を向ける。
 けれど、清永の目は思った以上に細められていて、ぎくりと息が詰まった。

 昨日も感じたひりつくような機嫌の悪さが、また清永を包み込んでいる。
 渋谷さんに対してだけ、清永の視線も言葉も態度も、わずかに――本当にごくわずかに冷ややかな気がしてならない。

「あああ、待って待って今屋上行っちゃ駄目、駄目待ってマジ待って今駄目ほんと」
「なんて?」

 渋谷さんのマシンガンめいた早口がうまく聞き取れず、つい訊き返してしまう。