友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「おい!」

 勢い任せに掴んだ清永の手首は、目で見る分には確かにおかしな方向に曲がっているのに、感触にそういう奇怪さはなかった。

 手首だ。男の手首にしてはやや華奢だが、ごく普通の……昨日と同じだ。
 まるで最初から歪んでなんていなかったと言わんばかりで、けれど清永自身は明らかにはっとしていた。細めていた目を大きく見開いたその表情こそが、僕の見たものが正しかったことを――清永に異常があったことを証明しているようで、息が詰まる。

「もう少し……隠せ。変な奴だと思われるぞ」

 隠せ、という直接的な言葉を使って注意を促したのは、これが初めてだった。
 同時に、〝人間じゃないってバレちゃうぞ〟と口走ってしまいそうだったところを〝変な奴だと思われるぞ〟と言い換えることができた自分を褒めたくもなった。さすがにそこまでは踏み込めない。

 僕の、今のギリギリのたしなめ方を、清永はどう受け取っただろう。
 心臓がどくどくと跳ねる。跳ねる……その言葉が通学路の川の鯉を連想させる。あの鯉の群れを思い出したら最後、清永が抱えている、以前は僕も確かに抱えていた〝異常〟について考えずにはいられなくなる。