友達になった人気者が、人間じゃなかった話

『あの子の首から上、普通にあった』
『容態が急変して~、とかもなさそうで良かったよ』

 渋谷さんの状態を語る清永の口調は、本当に自分の目で彼女の様子を見てきたのだとしか思えないくらい自然だった。
 事故の当日に見舞いに行くなんておかしいと、もっと早く訝しんでも良かったのに、あっさりスルーしてしまう程度には違和感がなかった。

 清永は、いつ、どうやって渋谷さんの容態と首の有無を確認したんだろう。
 背筋の震えが止まらなくなる。

「葉月のこと、もっと知りたい、もっと仲良くなりたい、どうすればいいのか考えてるずっと」
「……どう、って」
「あのときみたいにまた葉月からなんか借りればいいのかな、でもそうしたら葉月が葉月じゃなくなっちゃったりしそう、それは嫌だ、けど」

 ひとりでぶつぶつと喋り続ける清永は、僕を見ない。
 ただ前を見ている。いや、前を見ているように見えるだけで、なにも見ていないのかもしれなかった。

 ふと視線を落とした先で、ぶわ、と清永の手首がひしゃげた。
 制服からはみ出したそこがあり得ない角度に曲がって歪んで、僕ははっと周囲に目を走らせる。人はいない。通学の時間帯なのに、道には嘘みたいに僕らしかいなかったし、車すら通りかからない。

 ぞっとしながら、思わず声を張り上げた。