夏休みだって、今まで毎日当たり前のように顔を合わせていた清永と会えなくなると思うと寂しい。
 自分から遊びに誘えばいいじゃないかとは思うけれど、塾に行ったりとか家族で出かけたりとか、清永にも予定があるかもしれない。そうやって、誘えない理由を探してしまう。

 本人に訊けばいいのに訊かないから、僕は清永についてなかなか知れずにいる。
 訊けずにいるのは、僕自身に、まだ迷いが残っているからでもあった。

「おはよ、葉月!」
「おはよう」

 橋の手前の交差点で合流し、僕らはそこから一緒に学校へ向かう。
 近頃ではそれが日常になっていた。

 夏休みの間はこれもしばらく途絶えるのかと思うと、気分が沈む。
 橋脚の周りで跳ねる鯉は、どいつもこいつも相変わらず元気だ。この鯉どもを通して清永の異常を見せつけられたときのことを変に思い出したくなかったから、僕はあからさまに橋脚から目を逸らした。

「もうすぐ夏休みだな~」
「そうだな。予定、なんかあるのか」
「ない! だから一緒に遊ぼ、毎日!」
「毎日て」