うーん、と独り言めいた呟きを繰り返しながら、清永は一層くんくんと鼻を鳴らし続ける。
 いい加減にしろ気色悪い、と声を張り上げようとした矢先、彼は「分かった!」と弾んだ声をあげた。

「久世くんって、これから死ぬ人、分かっちゃう感じじゃない?」

 ひゅ、と喉が乾いた音を立てて鳴る。
 やっと僕の肩から顔を離し、(ひらめ)いたとばかりにぽんと手を叩いて笑みを浮かべた清永は、どこまでも楽しそうだ。

 一方の僕は、気が気ではなかった。
 なんだこいつ。なんで分かった。校内の誰にも喋っていない、僕のこの気色悪い力のことを、どうやって知ったんだ。

「な……んの話? ちょっとよく分かんな……」

 冷笑じみた口ぶりになればと願って声を絞り出したはずが、怯えた小動物みたいな細い声にしかならなかった。
 喉がピリピリと痛む。その不快な感覚に気を取られているうち、清永の手が頭上に乗った。無言のままで気味が悪かったから振り払おうとしたのに、腕は少しも動かせなかったし、なんなら(まぶた)を閉じることすらできなかった。

 満面の笑みを浮かべた清永は、「あは」と極めて上機嫌そうに囁く。