◯高松家の居間・夜
伊織は、高松と瑞稀に挟まれ、その向かいにニコニコ笑顔の高松父が机を挟んで座っている。
高松父「いつもは何のテレビ番組みるの? チャンネル変えても良いよ」
伊織「え、わ、私は何でも良いです!」
高松父「そんな遠慮しなくて良いのに」
伊織は、そわそわしながら高松に話しかける。
伊織「た、高松君。私、ここにいても良いのかな?」
高松「どうして?」
伊織「こんな至れり尽くせりで……申し訳なくて。それに、こうやってちゃんと座ったことなくて」
高松「座ったことない?」
伊織「あ、えっと、座ったことはあるんだけど、ずっと働かされてたっていうか雑用……的な? くつろいだりなんてしたら叱られてたし」
高松「マジで?」
瑞稀「伊織ちゃん!」
伊織は瑞希に両手を握られ、困惑顔を見せる。
伊織「は、はい」
瑞希「あなた、酷い扱い受けて来たのね。可哀想に……お父さん、暫くうちで休ませてあげよう」
高松父「そうだね。警察に届けるのは、もう少し状況を聞いてからが良いかな」
瑞稀「でしょ! このまま帰したら絶対もっと酷いことされるよ!」
高松は、机の下で伊織に向かってぐっと親指を立てた。
瑞稀「だからさ、伊織ちゃん! ここでは、何もしなくて良いから。何もせず、のんびりと。ね!」
伊織「のんびりと……」
瑞希「じゃ、あたしと一緒にお風呂入りに行こう。うち、温泉出るんだよ」
伊織「え!? そうなんですか!?」
伊織(温泉なんて入ったことないや)
瑞希「ふふ、興味あり気な顔だね」
伊織「はい! あ、でも……」
伊織(一緒に入ったら、痣も見られちゃうかな……)
躊躇っていると、瑞希は何かを察したようで、立ち上がった。
瑞希「こっち。あたしは後で入るからさ、先に入っておいで」
伊織「良いんですか?」
高松「じゃ、俺は帰るわ」
伊織「え、帰っちゃうの?」
高松「何? 寂しい?」
ニヤリと笑う高松。
伊織「あ、えっと……」
伊織はこくりと頷いた。
伊織「ちょっと心細いかも」
やや照れながら言うものだから、高松の心臓が射抜かれた。
高松「ま、マジで……? じゃあ、俺ずっとここにいようかな」
高松の頭を丸めた雑誌ではたく瑞希。
瑞希「バカ! あんたは、さっさと帰んなさい! 一か月帰ってくるの禁止!」
高松「何でだよ。良いじゃん、いつもは早く帰ってこいっていうくせに」
瑞希は周りに聞こえないよう高松に耳打ちした。
瑞稀「伊織ちゃんを匿ってるのバレたらマズいでしょ! 最近よく一緒にいるんでしょ? すぐにバレるわよ」
高松「へーい。じゃあな、神ざ……神田さん」
伊織「うん。また……次会えるのは、年明けてからになるのかな?」
高松「だな。あ、そうだった」
高松がポケットから、赤いお守りを取り出した。
高松「これ、犬神様のお守り。これ持ってたら龍神様は近付けねーはずだから。多分」
伊織「ふふ、多分って」
高松は伊織に耳打ちする。
高松「ま、俺がこんな神社の息子なんて誰も思わねーだろ。とりあえず、ここにいたら大丈夫だって。危なくなったら、また逃げよーぜ」
伊織はお守りを握りしめ、優しく微笑んだ。
伊織「ありがとう」
ほわほわした空気になったところを瑞希が丸めた雑誌で叩き切る。
瑞希「さ、伊織ちゃん。早く行こう。あたし、妹がずっと欲しかったんだぁ」
伊織「そ、そうなんですね」
〇龍宮・客間
広い畳の部屋に、布団が一枚。そこにアンナが眠っている。その脇に煌びやかな着物を纏った夾と簡素な着物姿の小龍。
夾「小龍、何故連れ帰った?」
小龍「だって……」
夾「だってじゃないよ。伊織ですら、龍宮にはまだ連れてきてないんだよ。連れてくるなら、伊織でしょ」
小龍「ですが……」
五歳男児姿の小龍は、頬をぷくっと膨らませる。
小龍「では、倒れた娘を放置して帰れと?」
夾「そうだよ。そして、今すぐに伊織を探しに行くよ」
小龍は、伊織の似てないモノマネをする。
小龍「『夾さんの薄情者! 私の友達を無下にするなんて最低! これ、絶対桜の仕業なのに、それを見捨てるなんて最低! 夾さん最低!』って、伊織様に言われちゃいますよ」
夾の額に青筋が浮かぶ。
夾「小龍。最低を三回も言わなくて良いんじゃないかな」
小龍「では、私は伊織様を探しに行って参りますので、夾様は、この娘を元居た場所に置いてきて下さいませ」
夾は溜め息を吐く。
夾「出来る訳ないだろう……しかし、伊織はどこに行ったのか……」
〇回想中
神崎神社・夕方。
文化祭が終わり、制服姿の桜が帰宅した。
夾「お帰りなさいませ」
健太郎「お帰りなさいませ。今日は伊織様は遅いんですね。いつもは桜様よりも早く帰って来るのに」
桜「あれ? 話聞いてない?」
健太郎「お話……と申しますと?」
桜「いなくなったんだって」
夾・健太郎「「え!?」」
桜は心配そうな表情を見せる。
桜「今、必死で監視の二人と、お弟子さん何人かで探し回ってるみたいだよ」
健太郎「俺ら、下っ端だから話すら来なかったっすね。悲しい」
泣く素振りを見せる健太郎。
健太郎「てか、大丈夫なんですか!? 誘拐とか?」
夾「誘拐……」
夾(こんなところでのうのうと、僕は何をしていたんだ。小龍……小龍はどうした? 伊織の様子を見に行くように言ったはずだが)
すると、小龍が桜の後ろにある草陰から、ひょこりと顔を出した。
小龍は口パクする。
小龍(い・お・り・さ・ま・の・ご・ゆ・う・じ・ん・が・た・い・へ・ん)
夾(全然分からん。何を言っているんだ。小龍)
むずがゆくなった夾は、健太郎の肩をポンと叩く。
夾「僕、もう上がりの時間だから、先に帰るね」
健太郎「で、ですけど、伊織様はどうするんすか?」
夾「個人的に探すから!」
その場を立ち去ろうとすれば、桜が思い出したように言った。
桜「そういえば、いなくなったのはお姉ちゃんだけじゃないんだって」
夾・健太郎「え?」
桜「最近よく一緒にいる高松幸次って先輩もいなくなったらしいよ」
健太郎「それって……」
◯現実に戻る
小龍「普通に考えれば、駆け落ちでしょうかね」
夾「伊織は、そんなことをする人間じゃない!」
小龍「随分と伊織様のことをご存知で」
夾「そりゃ……」
モノローグ『改めて聞かれると分からない』『伊織が何を好きで何が嫌いか』『伊織が誰を好きで何を思っているのか』『何も知らない』『けれど————』
※伊織の笑顔が浮かぶ。
夾「とにかく、危ない目に遭ってる可能性だってある。一刻も早く見つけ出さないと」
そこで、アンナが「んん」と声を漏らして寝返りを打った。
小龍「夾様、その格好で宜しいですか?」
夾は自身の姿を確認すると、ポンッとドライアイスのような白い煙に包まれた。それを見た小龍も続けて同じことをした。
次の瞬間、二人は現代風な服装へと変わった。
アンナはゆっくりと目を開けた。
アンナ「ん……ここは?」
見慣れぬ畳の部屋を見て、アンナは上体を起こす。
夾「僕の家だよ。僕の……僕の甥っ子が、君が倒れたからって連れて来たんだ」
アンナは、夾の美しすぎる顔を見てハッと息を飲んだ。そして、甥っ子と呼ばれた小龍を見た。
アンナ「君は……え、君が運んでくれたの!? って、違うか。でも、私……」
アンナは俯き、何かを思い出したように顔を上げた。
アンナ「お母さん! 私、お母さんのところに行かなきゃ! すみません。私、帰ります」
小龍「母君は、御自宅ですか?」
アンナ「母……君? 御自宅」
五歳児とは思えぬ古風な言い回しや、丁寧すぎる言葉にキョトンとするアンナだが、すぐに何かを理解したよう。
アンナ「そういうお年頃ってあるよね! ううん、うちのお母さんは病院にいるの。面会二十時までだから、早く行かなきゃ」
夾「それなら、今日は無理だね」
アンナ「え」
小龍「既に二十時半を過ぎております」
アンナ「え!? うそ!?」
夾「お父さんも心配してるだろうし、家までは送るから安心して」
アンナ「父は……いません。心配する人も……」
夾「そっか。ところで、伊織の居場所知らない?」
アンナ「え?」
夾「まさか、駆け落ちなんてしてないよね?」
アンナ「綺麗な銀髪の長い髪……超絶イケメンの優しそうなお兄さん。もしかして、伊織ちゃんの……?」
アンナは呆気に取られるも、取り乱すように懇願し始めた。
アンナ「お願いします! 伊織ちゃんを一緒に探して下さい! そうしないと、私……お母さんが、お母さんが死んじゃう」
夾「どういうこと?」※怪訝な顔で。
アンナ「実は私、お母さんの為に言われるがまま伊織ちゃんに……」
夾「伊織に?」
アンナは俯いた。
アンナ「いえ……何でもないです」
アンナ(私、最低だ…………)
夾と小龍は顔を見合わせた。そして、再びアンナに向き直る。
夾「ねぇ、君。今回の伊織がいなくなったことに関わってる?」
アンナは、俯いたまま返事をしない。
小龍「決まりですね」
夾「話してくれなきゃ、ここから帰さないよ」
アンナは、ガバッと顔を上げた。
アンナ「それは困ります!」
夾「だったら話して」
アンナ「でも……」
夾「伊織を探さないと、お母さんが死んじゃうんでしょ? それとも、死んじゃっても良いの?」
アンナ「それは……」
アンナは、涙を流しながら話し始めた。
アンナ「実は————」
伊織は、高松と瑞稀に挟まれ、その向かいにニコニコ笑顔の高松父が机を挟んで座っている。
高松父「いつもは何のテレビ番組みるの? チャンネル変えても良いよ」
伊織「え、わ、私は何でも良いです!」
高松父「そんな遠慮しなくて良いのに」
伊織は、そわそわしながら高松に話しかける。
伊織「た、高松君。私、ここにいても良いのかな?」
高松「どうして?」
伊織「こんな至れり尽くせりで……申し訳なくて。それに、こうやってちゃんと座ったことなくて」
高松「座ったことない?」
伊織「あ、えっと、座ったことはあるんだけど、ずっと働かされてたっていうか雑用……的な? くつろいだりなんてしたら叱られてたし」
高松「マジで?」
瑞稀「伊織ちゃん!」
伊織は瑞希に両手を握られ、困惑顔を見せる。
伊織「は、はい」
瑞希「あなた、酷い扱い受けて来たのね。可哀想に……お父さん、暫くうちで休ませてあげよう」
高松父「そうだね。警察に届けるのは、もう少し状況を聞いてからが良いかな」
瑞稀「でしょ! このまま帰したら絶対もっと酷いことされるよ!」
高松は、机の下で伊織に向かってぐっと親指を立てた。
瑞稀「だからさ、伊織ちゃん! ここでは、何もしなくて良いから。何もせず、のんびりと。ね!」
伊織「のんびりと……」
瑞希「じゃ、あたしと一緒にお風呂入りに行こう。うち、温泉出るんだよ」
伊織「え!? そうなんですか!?」
伊織(温泉なんて入ったことないや)
瑞希「ふふ、興味あり気な顔だね」
伊織「はい! あ、でも……」
伊織(一緒に入ったら、痣も見られちゃうかな……)
躊躇っていると、瑞希は何かを察したようで、立ち上がった。
瑞希「こっち。あたしは後で入るからさ、先に入っておいで」
伊織「良いんですか?」
高松「じゃ、俺は帰るわ」
伊織「え、帰っちゃうの?」
高松「何? 寂しい?」
ニヤリと笑う高松。
伊織「あ、えっと……」
伊織はこくりと頷いた。
伊織「ちょっと心細いかも」
やや照れながら言うものだから、高松の心臓が射抜かれた。
高松「ま、マジで……? じゃあ、俺ずっとここにいようかな」
高松の頭を丸めた雑誌ではたく瑞希。
瑞希「バカ! あんたは、さっさと帰んなさい! 一か月帰ってくるの禁止!」
高松「何でだよ。良いじゃん、いつもは早く帰ってこいっていうくせに」
瑞希は周りに聞こえないよう高松に耳打ちした。
瑞稀「伊織ちゃんを匿ってるのバレたらマズいでしょ! 最近よく一緒にいるんでしょ? すぐにバレるわよ」
高松「へーい。じゃあな、神ざ……神田さん」
伊織「うん。また……次会えるのは、年明けてからになるのかな?」
高松「だな。あ、そうだった」
高松がポケットから、赤いお守りを取り出した。
高松「これ、犬神様のお守り。これ持ってたら龍神様は近付けねーはずだから。多分」
伊織「ふふ、多分って」
高松は伊織に耳打ちする。
高松「ま、俺がこんな神社の息子なんて誰も思わねーだろ。とりあえず、ここにいたら大丈夫だって。危なくなったら、また逃げよーぜ」
伊織はお守りを握りしめ、優しく微笑んだ。
伊織「ありがとう」
ほわほわした空気になったところを瑞希が丸めた雑誌で叩き切る。
瑞希「さ、伊織ちゃん。早く行こう。あたし、妹がずっと欲しかったんだぁ」
伊織「そ、そうなんですね」
〇龍宮・客間
広い畳の部屋に、布団が一枚。そこにアンナが眠っている。その脇に煌びやかな着物を纏った夾と簡素な着物姿の小龍。
夾「小龍、何故連れ帰った?」
小龍「だって……」
夾「だってじゃないよ。伊織ですら、龍宮にはまだ連れてきてないんだよ。連れてくるなら、伊織でしょ」
小龍「ですが……」
五歳男児姿の小龍は、頬をぷくっと膨らませる。
小龍「では、倒れた娘を放置して帰れと?」
夾「そうだよ。そして、今すぐに伊織を探しに行くよ」
小龍は、伊織の似てないモノマネをする。
小龍「『夾さんの薄情者! 私の友達を無下にするなんて最低! これ、絶対桜の仕業なのに、それを見捨てるなんて最低! 夾さん最低!』って、伊織様に言われちゃいますよ」
夾の額に青筋が浮かぶ。
夾「小龍。最低を三回も言わなくて良いんじゃないかな」
小龍「では、私は伊織様を探しに行って参りますので、夾様は、この娘を元居た場所に置いてきて下さいませ」
夾は溜め息を吐く。
夾「出来る訳ないだろう……しかし、伊織はどこに行ったのか……」
〇回想中
神崎神社・夕方。
文化祭が終わり、制服姿の桜が帰宅した。
夾「お帰りなさいませ」
健太郎「お帰りなさいませ。今日は伊織様は遅いんですね。いつもは桜様よりも早く帰って来るのに」
桜「あれ? 話聞いてない?」
健太郎「お話……と申しますと?」
桜「いなくなったんだって」
夾・健太郎「「え!?」」
桜は心配そうな表情を見せる。
桜「今、必死で監視の二人と、お弟子さん何人かで探し回ってるみたいだよ」
健太郎「俺ら、下っ端だから話すら来なかったっすね。悲しい」
泣く素振りを見せる健太郎。
健太郎「てか、大丈夫なんですか!? 誘拐とか?」
夾「誘拐……」
夾(こんなところでのうのうと、僕は何をしていたんだ。小龍……小龍はどうした? 伊織の様子を見に行くように言ったはずだが)
すると、小龍が桜の後ろにある草陰から、ひょこりと顔を出した。
小龍は口パクする。
小龍(い・お・り・さ・ま・の・ご・ゆ・う・じ・ん・が・た・い・へ・ん)
夾(全然分からん。何を言っているんだ。小龍)
むずがゆくなった夾は、健太郎の肩をポンと叩く。
夾「僕、もう上がりの時間だから、先に帰るね」
健太郎「で、ですけど、伊織様はどうするんすか?」
夾「個人的に探すから!」
その場を立ち去ろうとすれば、桜が思い出したように言った。
桜「そういえば、いなくなったのはお姉ちゃんだけじゃないんだって」
夾・健太郎「え?」
桜「最近よく一緒にいる高松幸次って先輩もいなくなったらしいよ」
健太郎「それって……」
◯現実に戻る
小龍「普通に考えれば、駆け落ちでしょうかね」
夾「伊織は、そんなことをする人間じゃない!」
小龍「随分と伊織様のことをご存知で」
夾「そりゃ……」
モノローグ『改めて聞かれると分からない』『伊織が何を好きで何が嫌いか』『伊織が誰を好きで何を思っているのか』『何も知らない』『けれど————』
※伊織の笑顔が浮かぶ。
夾「とにかく、危ない目に遭ってる可能性だってある。一刻も早く見つけ出さないと」
そこで、アンナが「んん」と声を漏らして寝返りを打った。
小龍「夾様、その格好で宜しいですか?」
夾は自身の姿を確認すると、ポンッとドライアイスのような白い煙に包まれた。それを見た小龍も続けて同じことをした。
次の瞬間、二人は現代風な服装へと変わった。
アンナはゆっくりと目を開けた。
アンナ「ん……ここは?」
見慣れぬ畳の部屋を見て、アンナは上体を起こす。
夾「僕の家だよ。僕の……僕の甥っ子が、君が倒れたからって連れて来たんだ」
アンナは、夾の美しすぎる顔を見てハッと息を飲んだ。そして、甥っ子と呼ばれた小龍を見た。
アンナ「君は……え、君が運んでくれたの!? って、違うか。でも、私……」
アンナは俯き、何かを思い出したように顔を上げた。
アンナ「お母さん! 私、お母さんのところに行かなきゃ! すみません。私、帰ります」
小龍「母君は、御自宅ですか?」
アンナ「母……君? 御自宅」
五歳児とは思えぬ古風な言い回しや、丁寧すぎる言葉にキョトンとするアンナだが、すぐに何かを理解したよう。
アンナ「そういうお年頃ってあるよね! ううん、うちのお母さんは病院にいるの。面会二十時までだから、早く行かなきゃ」
夾「それなら、今日は無理だね」
アンナ「え」
小龍「既に二十時半を過ぎております」
アンナ「え!? うそ!?」
夾「お父さんも心配してるだろうし、家までは送るから安心して」
アンナ「父は……いません。心配する人も……」
夾「そっか。ところで、伊織の居場所知らない?」
アンナ「え?」
夾「まさか、駆け落ちなんてしてないよね?」
アンナ「綺麗な銀髪の長い髪……超絶イケメンの優しそうなお兄さん。もしかして、伊織ちゃんの……?」
アンナは呆気に取られるも、取り乱すように懇願し始めた。
アンナ「お願いします! 伊織ちゃんを一緒に探して下さい! そうしないと、私……お母さんが、お母さんが死んじゃう」
夾「どういうこと?」※怪訝な顔で。
アンナ「実は私、お母さんの為に言われるがまま伊織ちゃんに……」
夾「伊織に?」
アンナは俯いた。
アンナ「いえ……何でもないです」
アンナ(私、最低だ…………)
夾と小龍は顔を見合わせた。そして、再びアンナに向き直る。
夾「ねぇ、君。今回の伊織がいなくなったことに関わってる?」
アンナは、俯いたまま返事をしない。
小龍「決まりですね」
夾「話してくれなきゃ、ここから帰さないよ」
アンナは、ガバッと顔を上げた。
アンナ「それは困ります!」
夾「だったら話して」
アンナ「でも……」
夾「伊織を探さないと、お母さんが死んじゃうんでしょ? それとも、死んじゃっても良いの?」
アンナ「それは……」
アンナは、涙を流しながら話し始めた。
アンナ「実は————」



