と、そこにまた三女神の声が頭の中に浮かんだ。

「きゃー! もう初改変しちゃった! ナメクジスライムでレベル∞だよ!」

「すごぃすごーぃ。世界法則、即変わっちゃったぁ。次はもっと派手にぃ」

「……早い。面白い……望み通り」

 俺は笑った。

 めんどくせぇけど、確かに面白いかも。

 なんでも俺の思った通りってことだろ。

 しかも、それがいくらでも使えるチート能力。

 なにしろ、俺のマナは無限だからな。

 と、自分の能力に満足していると、地面がゴゴゴと震えだした。

 なんだよ、おい、地震か?

 森の奥から、地鳴りとも違う轟音が聞こえたかと思うと、木々がなぎ倒され、炎が噴き上がった。

 ――な、なんだ、こいつ。

 現れたのは怪物化した超巨大なめくじスライムだ。

 見上げるほどの巨体はボロアパート一棟くらいある。

 ヌメヌメの体表が黒鱗に覆われ、口から溶岩のような粘液が滴る。

 ぷるんぷるんの巨体がずいずい動くたびに揺れ、赤い瞳が俺を見下ろしている。

 なんだよ、こいつ、めんどくせぇ。

 消えろ、早く!

 俺は瞬き一つせず、指を鳴らす。

 (巨大化したなめくじスライムなんて最初から存在しない)

 ――パチン!

 世界が一瞬静止し、巨大ななめくじスライムが、光の粒子となって崩れ落ちる。

 跡形もなく消滅して森に静寂が戻った。

「……なんだったんだ、あれ。バグか?」

 俺が首を傾げると、頭の中に、女神トリオの嬌声が響く。

「えぇぇ!? スライムが怪獣に!? でも消えた!?」

「だーりん、早すぎぃ。私もぉ、びっくりぃ」

「加速中……改変バグ」

 改変バグ?

 しかも加速中ってどういうこと?

 ……って、聞こうとしてもすぐに姿が消えてしまう。

 思わずため息が出てしまう。

「めんどくせぇ……街行くか」

 森を歩く。

 こういうところを歩くのは久しぶりだななんて、最初は気分も良かったけど、いくら歩いても景色が変わらなくて飽きる。

 木々がざわざわして鳥が飛ぶのもなんか不気味だな。

(見通し良くしてくれ)

 パッチン!

 ポンと木々が消えて、周囲が草原になる。

 馬車の轍がくっきりとした道の先に街が見える。

 お、いいね。

 あそこまで行けば何か食う物が手に入るだろ。

 ていうか、思考するだけで、食う物くらい簡単に出るんだよな。

 でも、せっかくだから、この世界のうまいもの食いたいよな。

 とにかく街まで行ってみるか。

 よし、急ごう。

(俺の歩く速度、十倍速)

 指を鳴らした瞬間、ぐいっと背中を押されたように足が速くなる。

 足が地面に着く前に風みたいに進む。

 すげぇ。

 めんどくせぇ移動も楽勝じゃん。

 道の先に、あっという間に、石の城壁で囲まれた街が見えてきた。