とある春の日の昼過ぎ。
「…ちっ」
と舌打ちをし、石ころを蹴っている男の子を見つけた。中学生だと思われる。
どうしたんだろう、何かあったのかな。
それにしても、まず服装が不思議だ。学ランのボタンを留めずに、シャツも出している。ズボンもダボダボだ。
髪の毛は少し長い。そのせいでよく顔が見えない。しかし、いつもこんな時間に中学生は歩いていないから、何かあったのだろう。
しばらく僕が男の子を見つめていると、石ころが遠くに飛んで、いて、と誰かの声がした。
その声の正体は、この地域で一番やんちゃだと言われている高校生たち。髪の毛がカラフルに染めてあり、とても怖そうだ。
まあ、僕には意外と優しいんだけどね。
「あ?お前、何してんの?」
高校生たちは、男の子に詰め寄る。男の子は、
「…石蹴ってたら、当たった」
と言った。少し動揺しているような顔。なんだか、まずい雰囲気。
「この石、もしばーちゃんとかに当たったらどーすんだよ、ちび」
「痛いから謝ります」
「だよなあ。よかったな、俺らに当たって」
「はい」
こういうのって、絶対はいって答えちゃダメなやつなんじゃ。
僕がそう思った次の瞬間、話していた赤い髪の毛の高校生が、男の子を殴ろうとした。
男の子は慣れているように拳は交わしたが、間髪なく出された蹴りには太刀打ちできず、うっ、と言って地面にしゃがみこんだ。
ゆっくりと、高校生たちが男の子を囲んでいく。まずい。さらに追い打ちをかけようとしているのかも。
僕がなんとかしないと。
「にゃあ!」
やめて!
僕はそう叫んだ。すると、みんなが一斉にこちらを見た。そして、少しの沈黙の末、高校生たちは満面の笑みで僕に近寄ってきた。
態度の差がすごいなあ、ちょっと怖いよ。
「ぽすちゃんいたの!?かわいーかわいー」
そう言って高校生たちは順番に僕を撫でる。いつもよりも撫で方が雑だ。少しだけ強い。
今のうちに逃げるんだ、中学生。
高校生たちは、しばらくして帰っていった。もう男の子のことは忘れているように、気分のよさそうな足取りだった。
これで一件落着かな。
そう思って間もなく、きょろきょろと辺りを見回して、僕に近寄ってくる人がいることに気がついた。
あれは、さっきの男の子。