とある春の日の昼下がり。
散歩中なのか、お母さんと思われる人と手をつないだ女の子がやってきた。
「あ、ぽすちゃん。ほら菜穂、ぽすちゃんだよ」
「…やだ、まま。いや」
お母さんが僕に優しく触れる。しかし、女の子は一向に僕に近づこうとしない。
この子、どこかで見た気がする…。もしかして、小学生軍団の中の子かな?
いつも一人だけ僕に近づかない子がいるなとは薄々感じていたものの、誰かはわからなかったので驚いた。
こんなに可愛い子が、僕を嫌がっている。
「なんで菜穂は猫ちゃんが苦手なのかなぁ。ほら、とっても可愛いよ」
お母さんは僕を撫で続ける。慣れた撫で方で、この人は猫が好きなんだとすぐにわかった。
なほちゃん?だっけ。僕は怖い事しないよ、一回撫でてみてもいいよ。
僕はそう思ってなほちゃんの方に目を向ける。
しかし、
「ひゃっ!!こわい!!」
と叫んで、お母さんの後ろに隠れた。
あちゃちゃ、目を合わせただけで…。さすがに僕も少し悲しくなってしまう。
「ねこ、こわいよ」
「菜穂、何もしてこないよ?優しいよ、猫ちゃん」
「ううん、こわいよ」
ええ、とお母さんも困っている。どうしてそんなに僕たちのことを怖がるんだろう。
「だって、菜穂追いかけられたことあるよ。あと、えいとくんが言ってたもん」
追いかけられたことがあるんだ。それは少し怖くなってもおかしくはないけれど、ここまで怖がらなくても…。
僕が少し動いただけでも、またなほちゃんは怖がった。
「追いかけられた、って、いつそんなことがあったの?」
「帰りのときにね、おっきいねこに追いかけられたの。いやって言ってにげたけどね、ずっと追いかけてきてね、家についたらいなくなってたの」
「それ、本当に猫なの?」
「うん、ねこだよ。だって菜穂見たよ、こわかったよ」
なほちゃんはお母さんに一生懸命説明している。
この地域に、そんな怖い猫いるかなあ。
「あとね、えいとくんがね、ねこは人をたべちゃうんだって言ってた」
「た、食べちゃうの?」
お母さんもそろそろ疲れてきたようで、表情が歪んできている。
「うん、えいとくん言ってたよ!ねこはかむんだって言って、こわいねって」
「菜穂!」
お母さんが、突然少し大きな声で言った。
そして、なほちゃんの肩を優しく掴んで、お母さんは首を振った。
「菜穂、猫はそんな悪い生き物じゃないよ。菜穂の言ってることは、ちょっと違う」
「え?」
なほちゃんは驚いて、固まってしまう。
散歩中なのか、お母さんと思われる人と手をつないだ女の子がやってきた。
「あ、ぽすちゃん。ほら菜穂、ぽすちゃんだよ」
「…やだ、まま。いや」
お母さんが僕に優しく触れる。しかし、女の子は一向に僕に近づこうとしない。
この子、どこかで見た気がする…。もしかして、小学生軍団の中の子かな?
いつも一人だけ僕に近づかない子がいるなとは薄々感じていたものの、誰かはわからなかったので驚いた。
こんなに可愛い子が、僕を嫌がっている。
「なんで菜穂は猫ちゃんが苦手なのかなぁ。ほら、とっても可愛いよ」
お母さんは僕を撫で続ける。慣れた撫で方で、この人は猫が好きなんだとすぐにわかった。
なほちゃん?だっけ。僕は怖い事しないよ、一回撫でてみてもいいよ。
僕はそう思ってなほちゃんの方に目を向ける。
しかし、
「ひゃっ!!こわい!!」
と叫んで、お母さんの後ろに隠れた。
あちゃちゃ、目を合わせただけで…。さすがに僕も少し悲しくなってしまう。
「ねこ、こわいよ」
「菜穂、何もしてこないよ?優しいよ、猫ちゃん」
「ううん、こわいよ」
ええ、とお母さんも困っている。どうしてそんなに僕たちのことを怖がるんだろう。
「だって、菜穂追いかけられたことあるよ。あと、えいとくんが言ってたもん」
追いかけられたことがあるんだ。それは少し怖くなってもおかしくはないけれど、ここまで怖がらなくても…。
僕が少し動いただけでも、またなほちゃんは怖がった。
「追いかけられた、って、いつそんなことがあったの?」
「帰りのときにね、おっきいねこに追いかけられたの。いやって言ってにげたけどね、ずっと追いかけてきてね、家についたらいなくなってたの」
「それ、本当に猫なの?」
「うん、ねこだよ。だって菜穂見たよ、こわかったよ」
なほちゃんはお母さんに一生懸命説明している。
この地域に、そんな怖い猫いるかなあ。
「あとね、えいとくんがね、ねこは人をたべちゃうんだって言ってた」
「た、食べちゃうの?」
お母さんもそろそろ疲れてきたようで、表情が歪んできている。
「うん、えいとくん言ってたよ!ねこはかむんだって言って、こわいねって」
「菜穂!」
お母さんが、突然少し大きな声で言った。
そして、なほちゃんの肩を優しく掴んで、お母さんは首を振った。
「菜穂、猫はそんな悪い生き物じゃないよ。菜穂の言ってることは、ちょっと違う」
「え?」
なほちゃんは驚いて、固まってしまう。



