朝八時。
カイザーは白黒のアシンメトリーの髪を指で整え、白い肌に黒のタートルネックをまとっていた。
左目は白、右目は黒。机の上には白黒保安官のバッジ。今日は非稼働日だ。感情という概念こそ欠落しているが、体内時計が告げる「休暇」という言葉が、微かに不快指数を上げた。

「パライタ。起床」

ベッドの上で少年は小さく体を丸めていた。
青緑の髪が乱れ、海のような瞳は半ば開いたまま。
カイザーはその腕を掴み、垂直に引き起こす。

「体温三十六・二度。睡眠時間五時間四十七分。不足」

少年はかすかに頷いた。
カイザーは無言のままバスルームへ導く。

「洗浄開始」

シャワーの温度を三十八・五度に設定。服を脱がせ、ヘッドを手に取った。
「頭部、肩、背中、下肢。順序厳守」
水が降り注ぐ。少年は震え、石鹸を手探りで取る。
カイザーは壁にもたれ、腕を組んだ。

「効率低下。私が実行する」

石鹸を取り、淡々と背を洗う。指は機械のように均一な力で動く。傷はない。
「首筋、残渣確認。追加洗浄」
少年は小さく身をすくめた。
カイザーはシャンプーを取り、青緑の髪を丁寧に泡立て、三度すすぐ。

浴室を出ると、タオルで水分を九九％除去した。
「着衣」

クローゼットから白のTシャツと灰色のパンツを選び、サイズを確認する。
「フィット率九十八パーセント」

食堂へ。
プロテインシェイク三百ミリリットル、トースト二枚、バナナ一本。カイザーはトレイを整え、言った。
「摂取開始」

少年は椅子に腰かけ、震える手でスプーンを握る。
カイザーは向かいに座り、腕を組んだ。
「咀嚼回数二十回。一口ごとに遵守」

必死に噛む少年を、ストップウォッチの針が追う。
「摂取時間十二分三十四秒。標準内」

食後、少年をソファに誘導した。
「休息モードに切り替える」

腰を下ろし、カイザーはタブレットを膝に置く。
「バイタルチェック」
指先を首筋に当てて脈を測る。
「七十二。正常」

少年は息を吐き、体をソファに沈めた。
カイザーは毛布をかけ、室温を二十四度に調整する。

「睡眠推奨」

少年のまぶたが静かに閉じる。
タブレットを閉じ、指で乱れた髪を整えた。
「毛髪乱れ率十二パーセント。修正完了」

午後。分析室には無機質な光と、浅い寝息だけが漂っていた。
「……仮所有物。管理対象」

(この管理者を探さないと。面倒事が終わらんな……)

カイザーは横にならず、ただ座ったまま見守る。
「休暇。非効率。だが、プロトコルである」

白黒の髪が、青緑の髪に触れることはない。
静寂の中、二人の影は寸分違わず並行していた。