おまけ サアリルの本音
金属の廊下。蛍光灯が規則正しく点滅する。サアリルは壁に背を預け、タブレットを握ったまま、画面を落とす。整った白い短髪が、わずかに乱れる。無機質な眼は、床の一点を射抜いた。
……観測、終了。
指先でタブレットの縁をなぞる。冷たい。
シムズミ。お前の脳波は、完璧な平坦。感情の起伏、ゼロ。僕の理想の標本。
息を吐く。白い息が、冷たい空気に溶けた。
知識は武器だ。
真実は、作れる。
だから、僕は作る。
お前の過去も、未来も。
全部、僕のデータに。
拳を握る。爪が掌に食い込む。
でもな。
お前の灰色の瞳に、僕は映らない。
声が、初めて掠れる。
僕は、誰にも信用されない。
誰も、信用しない。
だから、孤独だ。
タブレットを胸に押し当てる。
お前は、動かない。
だから、僕は、お前を壊せない。
……いつか。
お前が目を覚ましたら、僕の真実を、暴いてくれ。
それが、僕に許された、唯一の裏切りだ。
傍から見たソガルの意見
「こいつルザミーネの男版」
金属の廊下。蛍光灯が規則正しく点滅する。サアリルは壁に背を預け、タブレットを握ったまま、画面を落とす。整った白い短髪が、わずかに乱れる。無機質な眼は、床の一点を射抜いた。
……観測、終了。
指先でタブレットの縁をなぞる。冷たい。
シムズミ。お前の脳波は、完璧な平坦。感情の起伏、ゼロ。僕の理想の標本。
息を吐く。白い息が、冷たい空気に溶けた。
知識は武器だ。
真実は、作れる。
だから、僕は作る。
お前の過去も、未来も。
全部、僕のデータに。
拳を握る。爪が掌に食い込む。
でもな。
お前の灰色の瞳に、僕は映らない。
声が、初めて掠れる。
僕は、誰にも信用されない。
誰も、信用しない。
だから、孤独だ。
タブレットを胸に押し当てる。
お前は、動かない。
だから、僕は、お前を壊せない。
……いつか。
お前が目を覚ましたら、僕の真実を、暴いてくれ。
それが、僕に許された、唯一の裏切りだ。
傍から見たソガルの意見
「こいつルザミーネの男版」



