黒城の地下深く、警備隊長の私室には、いつにも増して重い空気が漂っていた。
鉄鎖――僕自身がそう名乗る。黒地に赤い薔薇が咲き乱れるブレザーを羽織り、プリーツミニスカートの裾から黒いブーティを鳴らしながら、僕は部屋の中をゆっくりと歩く。後ろ髪の赤いリボンが揺れ、両腕に巻かれた黒鉄のブレスレットが小さく鳴った。血色のアイラインと黒のアイシャドウが、僕の白い瞳をより冷たく、支配的に見せている。
今日の「世話」は特別だ。
捕らえた少年、タムシ。ハクセン出身の白髪に灰色の瞳。体は女性だが、心には少年の不動の魂を宿している。玄武様の命により、僕は彼を「調教」する――いや、「世話をする」。鎖で繋ぎ、自由を奪い、完全に僕のものにする。それが、破壊の鎖を名乗る僕の役目。
部屋の中央に置かれた鉄の檻の中で、タムシは静かに座っていた。手足はすでに僕の能力で生み出した黒い鎖で拘束され、微動だにしない。白い髪が乱れ、灰色の瞳は静謐に僕を見返す。揺らがない――それが、気に入った。だからこそ、壊してみたくなる。
「タムシ。今日もお世話の時間だよ。玄武様のために、君を完璧に仕上げないとね」
檻に近づき、指先を鎖へと変形させる。僕の能力、「鎖型変形」。身体の一部を黒い鎖として自在に伸ばし、絡め取ることができる。その鎖をタムシの首にそっと巻きつけ、軽く引いた。息が乱れる。けれど、彼の瞳は変わらない。
「痛い? いいえ、君は痛みなんて感じない。不動心だもん。けれど僕の鎖は、痛みではなく支配を与える。君の自由を、全部、僕のものにする」
タムシは口を閉ざしたまま、ただ見つめてくる。華奢な体に鎖が食い込み、白い肌の上に黒い軌跡を描く。その瞬間、僕の胸奥がざわめく。支配欲が疼く。玄武様の前では決して乱されることのない心が、この少年の前では揺らいでしまう。僕はその弱さを振り払い、鎖を強く引いた。少年の身体が檻の床へと沈む。
「食事の時間だよ。君の好物、柔らかい果物。僕の手で、口に運んであげる」
檻を開け、鎖でタムシの顎を固定する。もう一本の鎖を腕から伸ばし、果実を掴んでその唇へ押し当てた。果汁が滴り、白い喉を伝って落ちる。タムシは抵抗せず、それを受け入れる。灰色の瞳に曇りはない。淡々とした静けさが、かえって僕の内を掻き乱す。
玄武様がいなければ、僕は崩れる。けれど、この少年を鎖で繋ぎとめていれば、きっと壊れずに済む――そう信じたくなる。
「いい子だね、タムシ。次は沐浴の時間。君の体、僕の鎖で隅々まで洗ってあげる」
鎖を液体のように変形させ、温かな流れで肌をなぞる。鎖で服を裂き、露わになった曲線を、優しく、しかし容赦なく磨いていく。灰色の瞳がかすかに揺れたその一瞬、僕は勝利を感じた。
だが彼は、静かに囁く。
「鉄鎖は、自分で自分を縛っているだけ」
その言葉に、心が軋む。支配と依存、その境界が音を立てて崩れる。
この痛みが何を意味するのか、まだ分からない。けれど――世話は終わらない。永遠に続く。
玄武様のために。
そして、僕の鎖の庭園で、タムシは咲くだろう。
赤い薔薇のように。
鉄鎖――僕自身がそう名乗る。黒地に赤い薔薇が咲き乱れるブレザーを羽織り、プリーツミニスカートの裾から黒いブーティを鳴らしながら、僕は部屋の中をゆっくりと歩く。後ろ髪の赤いリボンが揺れ、両腕に巻かれた黒鉄のブレスレットが小さく鳴った。血色のアイラインと黒のアイシャドウが、僕の白い瞳をより冷たく、支配的に見せている。
今日の「世話」は特別だ。
捕らえた少年、タムシ。ハクセン出身の白髪に灰色の瞳。体は女性だが、心には少年の不動の魂を宿している。玄武様の命により、僕は彼を「調教」する――いや、「世話をする」。鎖で繋ぎ、自由を奪い、完全に僕のものにする。それが、破壊の鎖を名乗る僕の役目。
部屋の中央に置かれた鉄の檻の中で、タムシは静かに座っていた。手足はすでに僕の能力で生み出した黒い鎖で拘束され、微動だにしない。白い髪が乱れ、灰色の瞳は静謐に僕を見返す。揺らがない――それが、気に入った。だからこそ、壊してみたくなる。
「タムシ。今日もお世話の時間だよ。玄武様のために、君を完璧に仕上げないとね」
檻に近づき、指先を鎖へと変形させる。僕の能力、「鎖型変形」。身体の一部を黒い鎖として自在に伸ばし、絡め取ることができる。その鎖をタムシの首にそっと巻きつけ、軽く引いた。息が乱れる。けれど、彼の瞳は変わらない。
「痛い? いいえ、君は痛みなんて感じない。不動心だもん。けれど僕の鎖は、痛みではなく支配を与える。君の自由を、全部、僕のものにする」
タムシは口を閉ざしたまま、ただ見つめてくる。華奢な体に鎖が食い込み、白い肌の上に黒い軌跡を描く。その瞬間、僕の胸奥がざわめく。支配欲が疼く。玄武様の前では決して乱されることのない心が、この少年の前では揺らいでしまう。僕はその弱さを振り払い、鎖を強く引いた。少年の身体が檻の床へと沈む。
「食事の時間だよ。君の好物、柔らかい果物。僕の手で、口に運んであげる」
檻を開け、鎖でタムシの顎を固定する。もう一本の鎖を腕から伸ばし、果実を掴んでその唇へ押し当てた。果汁が滴り、白い喉を伝って落ちる。タムシは抵抗せず、それを受け入れる。灰色の瞳に曇りはない。淡々とした静けさが、かえって僕の内を掻き乱す。
玄武様がいなければ、僕は崩れる。けれど、この少年を鎖で繋ぎとめていれば、きっと壊れずに済む――そう信じたくなる。
「いい子だね、タムシ。次は沐浴の時間。君の体、僕の鎖で隅々まで洗ってあげる」
鎖を液体のように変形させ、温かな流れで肌をなぞる。鎖で服を裂き、露わになった曲線を、優しく、しかし容赦なく磨いていく。灰色の瞳がかすかに揺れたその一瞬、僕は勝利を感じた。
だが彼は、静かに囁く。
「鉄鎖は、自分で自分を縛っているだけ」
その言葉に、心が軋む。支配と依存、その境界が音を立てて崩れる。
この痛みが何を意味するのか、まだ分からない。けれど――世話は終わらない。永遠に続く。
玄武様のために。
そして、僕の鎖の庭園で、タムシは咲くだろう。
赤い薔薇のように。



