朝の光がカーテンの隙間から差し込む頃、私はいつものようにパライタのベッドサイドに座っていた。
細身の体が白いシーツに沈み、海色の瞳はまだ夢の中に閉じ込められたまま。青緑の髪が枕に広がり、まるで波打ち際の藻のようにやわらかく揺れている。
「パライタくん、おはよう。今日も私が世話をするからね」
そっと頬に触れる。体温が伝わるだけで胸の奥が熱くなる。昨夜も、目を合わせただけで抑えきれなくなってしまった。けれど、今日は我慢しよう。パライタはまだ眠っているのだから。
私は静かに立ち上がり、キッチンへ向かう。白磁のように透ける肌が朝陽を受けて輝く。今日はスカートにした。前に「似合いそう」とパライタが言ってくれたから。恋人と色を合わせるのが好きだ。
朝食は簡単に。トーストにジャムを塗り、フルーツを添える。細い体に少しでも栄養を――そんな小さな使命感が、私の日々を支えている。
ベッドに戻ると、パライタが目を擦りながら上体を起こしていた。海色の瞳が私を捉える。
「リアン……おはよう」
その声だけで、私のデッドアイが疼いた。視界が一瞬、白黒に切り替わる。……発情はしていない。でも、いつ発情してもおかしくない距離。危険なほど近い。
「朝ごはん。食べさせてあげるね」
私はトレイを置き、スプーンでフルーツを掬い、彼の唇へ運ぶ。パライタは少し照れたように口を開けた。
「自分で食べられるよ……」
「だめ。今日は私が全部するって決めたの。君は、私にされたままでいて欲しいんだ」
手で頬を撫で、青緑の髪を指で梳く。香りを嗅ぐ。体温を感じる。それだけで満たされてしまいそうになる。いや、満たされない。けれど今は、それでいい。
食事が終われば次は着替えだ。パライタの服を揃え、ゆっくりと脱がせる。細い体の線が現れるたびに、心臓が早鐘を打つ。
「今日はこれ。私のと似た色にしてみたよ」
青緑のシャツ。スカートではないけれど、色でおそろいにした。パライタは少し戸惑いながらも袖を通し、穏やかに微笑んだ。
「ありがとう、リアン」
その笑顔。……もう、我慢できない。
抱き寄せて、唇を重ねる。深く、絡めるように。パライタの体がびくりと震え、心音が指先に伝わる。
「パライタくん……愛してる。ずっと、私のそばにいてね」
私は彼の予定をすべて把握している。今日の行動も、明日の約束も。誰かと会うなら一緒に。もし奪われそうなら、取り戻す。全力で。
深邃の血で菱形バリアを展開する準備は、いつでもできている。パライタを守るためなら、何でもする。
「二人だけの世界を作ろうね」
優しい声の奥に渦巻く執着。パライタは知らない。でも、それでいい。私が全部、世話をしてあげるから。
夕食のあと、二人でソファに並ぶ。パライタは膝の上に本を開き、しなやかな指先でページをめくっていた。私はただ、その横顔を見つめ続ける。海色の瞳、青緑の髪。穏やかな時間のはずなのに、胸の奥では疼きが始まっていた。
「……パライタくん」
呼びかけるより先に、彼が顔を上げた。視線が絡む。その瞬間、世界が音を立てて変わる。
デッドアイ、発動。
世界が白黒に落ちる。色が抜け、輪郭だけが残る。モノクロの中で、パライタの輪郭だけが鮮やかに生きていた。
細い肩、鎖骨の窪み、喉仏の小さな動き。そして――
発情エフェクト、検出。
頬から首筋にかけて淡い波紋のような輝きが広がる。水面に落ちた雫のようにゆっくりと拡散し、胸元を染める。波紋の中心が鼓動に合わせて脈打つ。熱。欲求。抑えきれないもの。
「……リアン?」
掠れた声。白黒の視界では、その震えが一層鮮やかに見える。唇の端が微かに震え、瞳の奥で揺れる光が粒子となって散る。
私の息が震える。
発情レベル:中程度。
まだ「求めあう」とまではいかない。けれど、触れたい。抱きしめたい。その衝動が、彼の体から立ち上る熱として私のデッドアイに映る。
「今……少し熱くなってる?」
囁く。パライタは目を逸らそうとする。遅い。私はすでに追撃の準備に入っていた。
モノクロバースト、チャージ。
右手の先に深邃の血が集まり、菱形の結晶となって回転する。これは「捕らえる」ためのショット。発情した対象を、逃さないための。
「だ、大丈夫だよ……ただ、ちょっと……」
言葉が途切れ、波紋が一気に強まる。
発情レベル、急上昇。
首筋から胸、腹部、そして下腹部へと熱が集中していく。渦巻く粒子が鼓動に合わせて脈打ち、理性の糸が切れそうになる。
「嘘つかないで、パライタくん」
彼の顎をそっと掴み、顔をこちらに向ける。白黒の瞳に揺れる光。デッドアイは、嘘を見抜く。
「全部見えてるよ……ここ、熱くなってる」
指先で胸元をなぞると、波紋がビクリと跳ねた。パライタの体が震える。
「リアン……っ」
その声と同時に、モノクロバーストを放つ。深邃の血の結晶が彼を包み、柔らかな光が全身を鎖めていく。これは拘束ではない。精神を縛る鎖。発情の熱を、私だけに向けさせるための。
「逃げないでね……パライタくん」
私は彼に覆いかぶさり、唇を重ねる。波紋が爆発のように広がる。
発情レベル:最大。
パライタのすべてが、私を求めている。
デッドアイは解除しない。これからも、ずっと。
パライタの熱も、欲も、すべて――私だけに見せて。
細身の体が白いシーツに沈み、海色の瞳はまだ夢の中に閉じ込められたまま。青緑の髪が枕に広がり、まるで波打ち際の藻のようにやわらかく揺れている。
「パライタくん、おはよう。今日も私が世話をするからね」
そっと頬に触れる。体温が伝わるだけで胸の奥が熱くなる。昨夜も、目を合わせただけで抑えきれなくなってしまった。けれど、今日は我慢しよう。パライタはまだ眠っているのだから。
私は静かに立ち上がり、キッチンへ向かう。白磁のように透ける肌が朝陽を受けて輝く。今日はスカートにした。前に「似合いそう」とパライタが言ってくれたから。恋人と色を合わせるのが好きだ。
朝食は簡単に。トーストにジャムを塗り、フルーツを添える。細い体に少しでも栄養を――そんな小さな使命感が、私の日々を支えている。
ベッドに戻ると、パライタが目を擦りながら上体を起こしていた。海色の瞳が私を捉える。
「リアン……おはよう」
その声だけで、私のデッドアイが疼いた。視界が一瞬、白黒に切り替わる。……発情はしていない。でも、いつ発情してもおかしくない距離。危険なほど近い。
「朝ごはん。食べさせてあげるね」
私はトレイを置き、スプーンでフルーツを掬い、彼の唇へ運ぶ。パライタは少し照れたように口を開けた。
「自分で食べられるよ……」
「だめ。今日は私が全部するって決めたの。君は、私にされたままでいて欲しいんだ」
手で頬を撫で、青緑の髪を指で梳く。香りを嗅ぐ。体温を感じる。それだけで満たされてしまいそうになる。いや、満たされない。けれど今は、それでいい。
食事が終われば次は着替えだ。パライタの服を揃え、ゆっくりと脱がせる。細い体の線が現れるたびに、心臓が早鐘を打つ。
「今日はこれ。私のと似た色にしてみたよ」
青緑のシャツ。スカートではないけれど、色でおそろいにした。パライタは少し戸惑いながらも袖を通し、穏やかに微笑んだ。
「ありがとう、リアン」
その笑顔。……もう、我慢できない。
抱き寄せて、唇を重ねる。深く、絡めるように。パライタの体がびくりと震え、心音が指先に伝わる。
「パライタくん……愛してる。ずっと、私のそばにいてね」
私は彼の予定をすべて把握している。今日の行動も、明日の約束も。誰かと会うなら一緒に。もし奪われそうなら、取り戻す。全力で。
深邃の血で菱形バリアを展開する準備は、いつでもできている。パライタを守るためなら、何でもする。
「二人だけの世界を作ろうね」
優しい声の奥に渦巻く執着。パライタは知らない。でも、それでいい。私が全部、世話をしてあげるから。
夕食のあと、二人でソファに並ぶ。パライタは膝の上に本を開き、しなやかな指先でページをめくっていた。私はただ、その横顔を見つめ続ける。海色の瞳、青緑の髪。穏やかな時間のはずなのに、胸の奥では疼きが始まっていた。
「……パライタくん」
呼びかけるより先に、彼が顔を上げた。視線が絡む。その瞬間、世界が音を立てて変わる。
デッドアイ、発動。
世界が白黒に落ちる。色が抜け、輪郭だけが残る。モノクロの中で、パライタの輪郭だけが鮮やかに生きていた。
細い肩、鎖骨の窪み、喉仏の小さな動き。そして――
発情エフェクト、検出。
頬から首筋にかけて淡い波紋のような輝きが広がる。水面に落ちた雫のようにゆっくりと拡散し、胸元を染める。波紋の中心が鼓動に合わせて脈打つ。熱。欲求。抑えきれないもの。
「……リアン?」
掠れた声。白黒の視界では、その震えが一層鮮やかに見える。唇の端が微かに震え、瞳の奥で揺れる光が粒子となって散る。
私の息が震える。
発情レベル:中程度。
まだ「求めあう」とまではいかない。けれど、触れたい。抱きしめたい。その衝動が、彼の体から立ち上る熱として私のデッドアイに映る。
「今……少し熱くなってる?」
囁く。パライタは目を逸らそうとする。遅い。私はすでに追撃の準備に入っていた。
モノクロバースト、チャージ。
右手の先に深邃の血が集まり、菱形の結晶となって回転する。これは「捕らえる」ためのショット。発情した対象を、逃さないための。
「だ、大丈夫だよ……ただ、ちょっと……」
言葉が途切れ、波紋が一気に強まる。
発情レベル、急上昇。
首筋から胸、腹部、そして下腹部へと熱が集中していく。渦巻く粒子が鼓動に合わせて脈打ち、理性の糸が切れそうになる。
「嘘つかないで、パライタくん」
彼の顎をそっと掴み、顔をこちらに向ける。白黒の瞳に揺れる光。デッドアイは、嘘を見抜く。
「全部見えてるよ……ここ、熱くなってる」
指先で胸元をなぞると、波紋がビクリと跳ねた。パライタの体が震える。
「リアン……っ」
その声と同時に、モノクロバーストを放つ。深邃の血の結晶が彼を包み、柔らかな光が全身を鎖めていく。これは拘束ではない。精神を縛る鎖。発情の熱を、私だけに向けさせるための。
「逃げないでね……パライタくん」
私は彼に覆いかぶさり、唇を重ねる。波紋が爆発のように広がる。
発情レベル:最大。
パライタのすべてが、私を求めている。
デッドアイは解除しない。これからも、ずっと。
パライタの熱も、欲も、すべて――私だけに見せて。



