朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋を淡い灰色に染めていく。
私はベッドの端に腰掛け、隣で眠るパライタくんの髪を指で梳いていた。
青緑の髪は、まるで海の底から零れた藻のように柔らかく、指の間をすり抜けていく。
長い睫毛がわずかに震え、寝息が私の膝に温かく触れる。——まだ、夢の中にいるんだね。
「パライタくん……おはよう、かな?」
囁くように声をかけると、彼はゆっくりとまぶたを開いた。
海色の瞳が朝の光を受けて、透明な揺らめきを放つ。
その一瞬、息が止まる。——綺麗すぎて、胸が痛い。
「モノ……? もう朝?」
寝ぼけた声は甘く掠れていて、思わず微笑んでしまう。
私が頷くと、彼の頬にそっと手を添えた。指先に冷たさが宿る。
……もしかして、昨日、窓を開けたままだったせい?
「ごめんね、風邪ひいちゃった?」
「ううん、大丈夫。……でも、ちょっと寒いかも」
その小さな言葉に、私は慌てて毛布を引き寄せ、彼の肩まで掛ける。
それでも足りない気がして、自分の上着を脱いで、そっと彼の膝にかけた。
「モノ、それ……着てたやつだよね? 本当にいいの?」
「うん。私、平気だよ。パライタくんが温まってくれれば、それでいいから」
本当は少し肌寒い。でも、彼の笑顔が見られればそれでいい。
私は立ち上がり、キッチンへ向かう。冷蔵庫を開けると、昨日買った材料が並んでいた。
——卵、牛乳、ベーコン。朝には、これくらいがちょうどいい。
フライパンを温め、卵を割りながら小さく鼻歌を歌う。
♪……君の寝顔が、好きだよ……♪
切なさとやさしさが混ざった旋律が、静かな部屋の空気に溶けていく。
ベッドの方を見ると、パライタくんが毛布を肩にかけたまま私を見つめていた。
「……モノ、いつもありがとう」
振り向くと、彼は少し照れたように笑っている。
「いいよ。私、パライタくんの世話をするのが好きだから」
——だって、そうすることで、私の存在が少しでも意味を持てる気がするから。
「……おいしい」
食卓についた彼が卵を口に運び、その一言をこぼした瞬間、胸が熱くなる。
こんな言葉ひとつで、何度でも生き返れる気がした。
食後、私はクローゼットを開けた。今日はどんな服が似合うだろう。
白と青のストライプ。海色の瞳と響き合うような色だ。
「これ、着てみて?」
パライタくんは素直に頷き、着替え始める。
私はその背中を見つめる。細い肩、滑らかな首筋、華奢な腰。
触れたい衝動を、息を詰めて押し留めた。——まだ、早い。
「どう?」
彼が振り向く。私は襟を整えながら微笑んだ。
「似合うよ。すごく」
頬がわずかに赤く染まる。その瞬間、私のオッドアイが反転した。
——デッドアイ。
視界が白黒に落ちる。パライタくんの輪郭のまわりに、淡い光が揺らめいていた。
恋情。まだ薄いけれど、確かにそこにある。
私は目を伏せ、微笑む。
「パライタくん、今日はどこか行きたいところある?」
「ううん。モノと一緒にいられれば、それでいい」
その言葉に息を呑む。——嬉しい。でも、怖い。
この気持ちが、いつか暴走してしまうんじゃないかって。
私は彼の手を取り、そっと握った。
「私も、一緒にいたいよ。ずっと、ずっと」
彼は驚いたように目を瞬かせ、すぐに微笑む。
「……うん」
その笑顔が、私の全てだった。
私は彼の髪に小さく口づけを落とす。
「今日は、私が全部世話するから。安心して、ね?」
——パライタくんが、私から離れないように。
私が、彼の全てになれるように。
私はベッドの端に腰掛け、隣で眠るパライタくんの髪を指で梳いていた。
青緑の髪は、まるで海の底から零れた藻のように柔らかく、指の間をすり抜けていく。
長い睫毛がわずかに震え、寝息が私の膝に温かく触れる。——まだ、夢の中にいるんだね。
「パライタくん……おはよう、かな?」
囁くように声をかけると、彼はゆっくりとまぶたを開いた。
海色の瞳が朝の光を受けて、透明な揺らめきを放つ。
その一瞬、息が止まる。——綺麗すぎて、胸が痛い。
「モノ……? もう朝?」
寝ぼけた声は甘く掠れていて、思わず微笑んでしまう。
私が頷くと、彼の頬にそっと手を添えた。指先に冷たさが宿る。
……もしかして、昨日、窓を開けたままだったせい?
「ごめんね、風邪ひいちゃった?」
「ううん、大丈夫。……でも、ちょっと寒いかも」
その小さな言葉に、私は慌てて毛布を引き寄せ、彼の肩まで掛ける。
それでも足りない気がして、自分の上着を脱いで、そっと彼の膝にかけた。
「モノ、それ……着てたやつだよね? 本当にいいの?」
「うん。私、平気だよ。パライタくんが温まってくれれば、それでいいから」
本当は少し肌寒い。でも、彼の笑顔が見られればそれでいい。
私は立ち上がり、キッチンへ向かう。冷蔵庫を開けると、昨日買った材料が並んでいた。
——卵、牛乳、ベーコン。朝には、これくらいがちょうどいい。
フライパンを温め、卵を割りながら小さく鼻歌を歌う。
♪……君の寝顔が、好きだよ……♪
切なさとやさしさが混ざった旋律が、静かな部屋の空気に溶けていく。
ベッドの方を見ると、パライタくんが毛布を肩にかけたまま私を見つめていた。
「……モノ、いつもありがとう」
振り向くと、彼は少し照れたように笑っている。
「いいよ。私、パライタくんの世話をするのが好きだから」
——だって、そうすることで、私の存在が少しでも意味を持てる気がするから。
「……おいしい」
食卓についた彼が卵を口に運び、その一言をこぼした瞬間、胸が熱くなる。
こんな言葉ひとつで、何度でも生き返れる気がした。
食後、私はクローゼットを開けた。今日はどんな服が似合うだろう。
白と青のストライプ。海色の瞳と響き合うような色だ。
「これ、着てみて?」
パライタくんは素直に頷き、着替え始める。
私はその背中を見つめる。細い肩、滑らかな首筋、華奢な腰。
触れたい衝動を、息を詰めて押し留めた。——まだ、早い。
「どう?」
彼が振り向く。私は襟を整えながら微笑んだ。
「似合うよ。すごく」
頬がわずかに赤く染まる。その瞬間、私のオッドアイが反転した。
——デッドアイ。
視界が白黒に落ちる。パライタくんの輪郭のまわりに、淡い光が揺らめいていた。
恋情。まだ薄いけれど、確かにそこにある。
私は目を伏せ、微笑む。
「パライタくん、今日はどこか行きたいところある?」
「ううん。モノと一緒にいられれば、それでいい」
その言葉に息を呑む。——嬉しい。でも、怖い。
この気持ちが、いつか暴走してしまうんじゃないかって。
私は彼の手を取り、そっと握った。
「私も、一緒にいたいよ。ずっと、ずっと」
彼は驚いたように目を瞬かせ、すぐに微笑む。
「……うん」
その笑顔が、私の全てだった。
私は彼の髪に小さく口づけを落とす。
「今日は、私が全部世話するから。安心して、ね?」
——パライタくんが、私から離れないように。
私が、彼の全てになれるように。



