氷川丸の記録

白城の丘に建つ病院施設。最上階の院長室は、すべてが白で統一されていた。白い壁、白い床、そして白い髪と白色の瞳を持つ院長・氷川丸は、巨大なホログラムディスプレイの前に立っていた。屈強な体躯は白衣に包まれ、穏やかな微笑みが常に浮かんでいる。
「パライタ君、また君のデータを整理する日が来たね」
机の上には、封印された日記帳と、少年の左眼に埋め込まれた「アイカメラ」のデータチップが置かれていた。パライタ——細身の派遣調査隊員、海色の瞳と青緑色の髪を持つ少年——は、現在この施設の隔離病棟で眠っている。

フェーズ1:日記からのデータ抽出
氷川丸はまず、日記帳を開いた。パライタの細い指で書かれた文字が、ページごとに浮かび上がる。

【日記抜粋 - 調査隊員パライタ】
・3月12日:キヅタさんに熱を出して倒れた。女装してるけど、すごく優しい。スープ作ってくれた。
・3月15日:風呂で背中流してもらった。恥ずかしかったけど、安心した。
・4月2日:任務で怪我。キヅタさんが夜通し看病。白黒の髪が揺れてた。
院長は指先でホログラムを操作し、キヅタのプロファイルを生成する。

【人物データ:キヅタ】
- 外見:屈強な白黒人、白黒アシンメトリーショートヘアー、オッドアイ(白/黒)、白肌
- 特徴:女装家(口調は男性的)、パライタの専属保護者
- 行動パターン:料理、看病、身体介助(風呂など)
- 関係性:パライタの「世話係」として3年間継続

フェーズ2:アイカメラ記録の解析
次に、氷川丸はデータチップをスロットに挿入。パライタの左眼から記録された映像が、3D映像として展開される。
映像記録#047

キヅタがパライタの額に冷たいタオルを当てるシーン。白黒の髪が少年の顔に触れる。

キヅタ:「熱は、38.7度だ。薬をちゃんと飲んでね」

パライタ:「キヅタ……ごめんね」
カメラが揺れ、少年の海色の瞳に涙が浮かぶ。
映像記録#112

浴室。キヅタがパライタの背中を洗う。白い肌と青緑色の髪が湯気に包まれる。

キヅタ:「力を抜いて。私がいるからさ」
パライタのカメラがキヅタのオッドアイを捉える——白と黒の瞳が優しく光る。
氷川丸は映像を一時停止し、感情解析AIを起動。

【感情解析結果】
- キヅタ:保護欲99%、愛情87%、照れ隠し63%
- パライタ:依存度95%、安心感98%、幸福感82%
フェーズ3:統合データベースの作成
院長はすべての情報を統合し、巨大なホログラムツリーを構築する。

【パライタ世話人データベース ver.2.1】
┣ キヅタ(メイン保護者)
┃ └ 期間:1095日(3年間)
┃ └ 介助回数:847回(看病312回、食事285回、身体介助250回)
┃ └ 特記事項:「女装家だが口調は男性的」「白黒アシンメトリー髪」
┣ その他臨時世話人
┃ └ 調査隊医療班(計12名、任務中の応急処置のみ)

氷川丸は最後に、隔離病棟のモニターを点ける。そこには眠るパライタの姿——青緑色の髪が枕に広がり、海色の瞳は閉じられている。
「おつかれさん、パライタ君。データは完成したよ。ゆっくり夢の中で、某ネズミコンビ庭園で遊んでね★」
院長は白い椅子に腰掛け、静かに微笑む。
「キヅタは、カイザーの次に平和だね。なんと、キヅタが遊びに来るって。今日の深夜で〜す★」
白い部屋に、ホログラムの光だけが静かに揺れていた。