西国の港街。
午前十一時。
エーイーリーはよれた銀警官の制服のまま、乱れたポニーテールを揺らしてテーブルに座っていた。白い瞳は半ば眠り、石槌は壁に立てかけられている。今日は休み。静かな、曇りがちな朝。腹が鳴った。

「……おなか、すいた」

隅の椅子では、少年が小さく身を縮めていた。青緑の髪が肩にかかり、海色の瞳が怯えに瞬く。
エーイーリーはゆっくりと立ち上がると、少年の腕をつかんだ。

「パライタ。おなかすいた」

部屋の奥で冷蔵庫を開ける。巨大なハム、チーズ、パン、牛乳。
「たくさん食べる」
そう言って、少年をテーブルに座らせ、自分も隣にどっかりと腰を下ろす。

「食べるよ」

大きな手でパンをちぎり、少年の口に押し込む。
「んぐ……んぐ」
少年は必死に噛み、エーイーリーは満足そうに微笑んでチーズを重ねる。

「もっと」

牛乳をコップになみなみと注ぎ、少年の口へ流し込む。
「ごくごく……こぼさない」
咳き込みながらも飲み干した少年が、かすかに微笑んだ。

「……うまい」

いつのまにかテーブルの皿は空になり、エーイーリーは満足げに腹を撫でた。
「風呂」

浴室に入り、少年の服を脱がせてシャワーを浴びせる。
「洗う」
石鹸を泡立て、大きな掌で少年の体をやさしくこする。
「頭も」
シャンプーの香りが立ちのぼる。青緑の髪を泡が包み、エーイーリーはその柔らかさに一瞬目を細める。

浴室を出ると、タオルで少年の体を包み込む。
「着替え」
クローゼットから、大きすぎるTシャツと短パンを取り出した。
「これでいい」

居間に戻り、少年をソファに座らせる。エーイーリーも隣に腰を下ろし、太い腕を回して寄り添った。

「眠い」

少年の肩に頭を預ける。ゆっくりとまぶたが降りる。

静かな午後。
埃の舞う光の中で、二人の寝息だけが響く。

「……パライタ」
エーイーリーは寝言のように呟いた。
「おなかすいたら……また食べる」

少年は小さく頷き、男の胸に身を沈める。
白い髪が青緑の髪に絡み、
居間には、のんびりと重なる影。
破壊の前の静けさが、そこで静かに息づいていた。