お昼休みになって、焼きそばパンの袋を開けてひとくち。
「裕太せーんぱいっ」
後輩の声に急にザワつく教室、視線が俺に集まってきて気まずい。
ただ焼きそばパンを口にくわえてる状態で、こんなに注目されることがあっていいのか。
そっと口に含んだ焼きそばパンを数回噛んで飲み込み、むき出しにしたパンを袋に戻し、ざっと掴んで教室を出た。
「……で、なんだよ。よく3年生の教室まで顔出せたな」
「いや、だってもう顔見知りですし、大好きな先輩が呼んでますし」
「呼んでねぇよ、勝手に来んな」
「いや、仲良くなる為には、ランチを一緒にするといいって、雑誌に……」
「どんな雑誌見てんだよ」
ツッコミどころ多すぎて、逆に心配になるわ。
あれ、これって上手く向こうのペースに引っ張られてる?
「で、お昼の邪魔しといて、めし食わねえと時間なくなるぞ」
「裕太先輩は、いつもパンだと聞いていたので、じゃじゃーん、お昼作ってきました〜」
「…うわっ、すげ……」
俺料理出来ねえから、こういうの見るとまじで憧れる。
うちの両親も別にお弁当とか作らねえからな。
最後に人の手作り弁当食べたの小学生のときだっけ。
「これ、ほんとに食っていいの?」
「いいですよ、先輩のために作ってきたんですから」
男でも食べ応えありそうな大きな唐揚げに、コショウのふりかけられたポテサラに、蒸したブロッコリーやにんじん。
彩りは抜群に良い。
ひとくち食ってみるか。
「っ…うま…」
美味すぎて、バクバク入る。
唐揚げの味付けも絶妙に良くて、うまい。
ふと、後輩の顔を見ると、ニヤニヤとした表情。
まずい。
「裕太先輩、そんなに僕の料理が美味しいんですか…!」
やられたよ。
胃袋を掴まれたってこういうことを言うのかな。
「あぁ、そうだよ、えっと……」
腕に書いてある名前を確認して、名前を言う。
「昇の作る料理はうめーよ」
なんでそうしたかって?
美味いご飯食べさせてもらったから、名前くらい呼んでやってもいいかと思ったんだよ。
別にいいだろ。
そのくらいご褒美やっても。
まぁ、なんで好かれてんのかわかんねぇんだけど。
「…先輩っ…」
「……なんだよ」
「名前、まだ覚えてないのバレてますからね。まぁ、今日はご飯食べて貰えただけで許してあげます」
「なんで上からなんだよ」
「先輩が甲斐性なしだからですっ」
怒ってんだか、喜んでんだか、わかんねぇよ。
………ほんっ…とに、調子狂うわ。



