「遊園地? 冗談だろ」

涼音は入場ゲートの前で固まる。

「レクリエーションは精神安定に寄与する」

「お前が言うと説得力ゼロなんだが」

アディシェスは構わず入場券を購入し、涼音の手を引く。

「……手、繋ぐな」

「迷子防止だ」

「子供扱いすんな!」

観覧車の中。

涼音は窓の外を眺めていた。青い空、遠くに見える街、そして隣にいるアディシェス。

「……なんか、変だ」

「何が?」

「お前といると、世界が……ノイズじゃなくなる」

アディシェスは涼音の横顔を見つめる。

「それは、君が世界を受け入れ始めたからだ」

「受け入れる? 俺が?」

「そうだ。君は孤立を選んだのではない。ただ、接続の方法を知らなかっただけだ」

涼音は唇を噛む。

「……お前は、俺を変えようとしてるのか?」

「違う。君が君のままでいられるように、隣にいるだけだ」

観覧車が頂点に達する。

「……ありがとう」

小さな声だったが、アディシェスには届いていた。