「なんで回転寿司……?」

涼音は店の前で立ち止まる。アディシェスは当然のように入店していく。

「効率的で、選択の自由があり、かつ適切な栄養バランスを保てる。理想的だ」

「お前、本当に人間か……?」

二人は席に座る。アディシェスは即座にタブレットで注文を始め、涼音はただ流れてくる皿を眺めていた。

「……サーモン、三皿目」

「たんぱく質は重要だ」

「お前、味わってるのか?」

「味覚は正常に機能している」

涼音はため息をつき、適当にマグロを取る。

「……なあ」

「何だ」

「お前と一緒にいると、俺が『普通』になっていく気がする」

アディシェスは箸を止め、涼音を見た。

「それは、悪いことか?」

「……わからない。でも、怖い」

「恐怖は自然だ。だが、恐怖に支配される必要はない」

涼音は俯く。

「お前は、俺が壊れても平気なのか?」

「壊れさせない」

即答だった。

「それが、僕の誓いだ」

涼音の手が震える。アディシェスは静かにその手を握った。

「……ここ、回転寿司だぞ」

「問題ない。秩序は保たれている」

涼音は小さく笑った。初めて、心からの笑みだった。