白金色の朝日が窓から差し込む。涼音は布団の中で目を覚まし、隣の部屋からアディシェスが整然と身支度を整える音を聞いた。

「……また、5時起床か」

涼音は呟く。アディシェスの生活リズムは機械的なまでに正確だ。それが心地よいのか、息苦しいのか、涼音自身にもまだ判別できない。

「涼音、起きているなら散歩に行こう」

ドアの向こうから、静かだが有無を言わさぬ声が響く。

「……ノイズだ。朝からノイズを送ってくる」

涼音は布団を被り直そうとしたが、アディシェスはすでに部屋に入ってきていた。灰銀の私服姿――それでも、どこか制服を思わせる整った着こなし。

「拒否は許可しない。君の生活リズムは改善が必要だ」

「……システム管理者気取りか」

「管理ではない。共生だ」

アディシェスは淡々と答え、涼音のパーカーを手渡す。

公園の遊歩道。青い朝霧が木々の間を漂っている。

涼音は無言で歩き、アディシェスは半歩後ろからついてくる。まるで護衛のように。

「……なんで、俺なんかと」

涼音が不意に呟く。

「何が?」

「同棲なんて。お前、秩序の番人だろ。俺みたいな……ノイズまみれの欠陥データと一緒にいる理由がわからない」

アディシェスは足を止め、涼音の横に並んだ。

「君は欠陥ではない。ただ、整理されていないだけだ」

「整理? 俺を『修正』するつもりか?」

「違う」

アディシェスの白い瞳が、涼音をまっすぐに見つめる。

「君という存在そのものに、価値がある。それを信じられないのは、君自身の問題だ。だが、僕はその証明に付き合う」

涼音は顔を背ける。

「……意味不明だ」

「理解しなくていい。ただ、隣にいればいい」

朝の空気が、少しだけ温かく感じられた。