夜空が裂けた。
アィーアツブスの咆哮とともに、銀衛団の聖塔は震え、あらゆる心が同じ痛みに共鳴した。誰かの涙が誰かの怒りに変わり、笑いが絶叫へと反転する。街そのものが、彼の感情伝播〈イモーション・ウェーブ〉に呑み込まれてゆく。
その中心に、レツィナ・コールは立っていた。白布の裾が嵐に舞い、彼女の唇は祈りを紡いでいる。自らの命が尽きゆくことを知りながら、彼の心を包み込もうと両手を掲げた。
「……静まれ、銀の心よ」
その声は風よりも微かで、しかし塔のすべての残響を沈めた。
銀光の波が彼女の身体を貫き、祈りが血に染まる。瞬間、世界から音が消えた。
赤と白が空へ溶け合い、レツィナの血の花弁が夜風に舞う。
感情の奔流が凍りつき、アィーアツブスの胸に、今まで決して返らなかった“反響”が生まれた。
何かが、彼の中で砕けた。
怒りの叫びが途絶え、ただ残ったのは、祈りの余韻と、彼女の白い手の記憶だった。
アィーアツブスの咆哮とともに、銀衛団の聖塔は震え、あらゆる心が同じ痛みに共鳴した。誰かの涙が誰かの怒りに変わり、笑いが絶叫へと反転する。街そのものが、彼の感情伝播〈イモーション・ウェーブ〉に呑み込まれてゆく。
その中心に、レツィナ・コールは立っていた。白布の裾が嵐に舞い、彼女の唇は祈りを紡いでいる。自らの命が尽きゆくことを知りながら、彼の心を包み込もうと両手を掲げた。
「……静まれ、銀の心よ」
その声は風よりも微かで、しかし塔のすべての残響を沈めた。
銀光の波が彼女の身体を貫き、祈りが血に染まる。瞬間、世界から音が消えた。
赤と白が空へ溶け合い、レツィナの血の花弁が夜風に舞う。
感情の奔流が凍りつき、アィーアツブスの胸に、今まで決して返らなかった“反響”が生まれた。
何かが、彼の中で砕けた。
怒りの叫びが途絶え、ただ残ったのは、祈りの余韻と、彼女の白い手の記憶だった。



